脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは?

腰部脊柱管狭窄症とは腰椎の椎間孔や脊柱管という場所が狭くなることにより、主に臀部から下肢に神経症状が出現する疾患です。
特徴的な症状は歩行時に徐々に神経症状が強くなり、歩行困難になってしまいます。
しかし前かがみやかがんだ状態でしばらく休息していると、症状が軽減しまた歩行可能になるます。
これを専門的用語で間欠性跛行(intermittent claudication)といいます。

日本では70才以上で約10%の方がこの疾患で悩んでいると言われています。


歩行器やショッピングセンターのカートを押しながらであれば歩行可能な場合もあります。


ただし同じような症状を有する疾患に血管が原因の場合もありますので、そちらの検査も行ったうえで診断されることが一般的です。

なにが問題なのか?

歩行ができなくなるという点で、高齢者の生活の質(QOL)が著しく低下する点が問題となります。
また超高齢社会において、ますますこの疾患で悩まれる方は増えることが推測されています。

脊柱管狭窄症の治療

この疾患の治療は手術療法と保存療法とに大別されます。
一般的にはまず保存療法が選択され、無効な場合には手術が選択されます。
ただし陰部や肛門部への神経障害や筋力低下がある場合には早期に手術が選択されます。
保存療法には投薬治療や理学療法などが最初におこなわれ、投薬治療は疼痛を緩和させるものや血流を改善させるものが処方されます。しかしお薬を長期的に服用する副作用の問題も指摘されています。
また理学療法は一般的に腰部の牽引療法や温熱療法、低周波療法などがおこなわれますが、その効果は不明です。

さてここまで一般的な西洋医学で行われる標準治療を紹介しました。

鍼灸治療は先に紹介した保存療法の一つになります。

鍼灸治療と投薬と理学療法の中で、どれが一番効果があるのでしょうか?

東京大学でこれらについて比較検討した論文があります。


腰部脊柱管狭窄症の3つの保存療法の比較研究
:鍼治療と理学療法による腰部脊柱管狭窄症の研究


A comparative study of three conservative treatments in patients with lumbar spinal stenosis: lumbar spinal stenosis with acupuncture and physical therapy study (LAP study)

この研究では脊柱管狭窄症によるL5神経根障害を有する患者119名に対して、それぞれ投薬治療、運動療法、鍼灸治療に振り分け、その効果を比較検討したものです。

結果は鍼灸治療が、投薬治療や運動療法に比して優位に改善したと報告されています。

これまで脊柱管狭窄症に対する鍼灸治療が有効であるという報告はありましたが、保存療法の中でどれが一番有効なのかは不明でした。しかしこの研究により最も優れた効果を示す可能性のある治療法は鍼灸治療であることが示唆されました。

それではなぜ鍼灸治療が効くのでしょうか?~背骨の狭くなった部分が広がるの?~

そもそも骨棘や靭帯の肥厚、その他の原因により神経の血流障害が起こり、歩行で必要な神経血流が確保できなくなり神経症状が発症するのが脊柱管狭窄症なのです。手術は狭くなった部分を拡げることによって血流が改善し症状が軽減させるという目的でおこなうのです。

鍼灸治療は神経の周囲に刺激を行うことで神経そのものの血流が改善することで症状を消失させることを目的にしています。

まず手術ではなく、保存療法で最も効果的だと研究で明らかになっている鍼灸治療を試してみませんか。

脊柱管狭窄症と紛らわしい疾患

脊柱管狭窄症と診断・治療されている患者さんの中で、筋肉の凝り(トリガーポイント)が原因で同じような症状が出ている場合が時々見られます。また両者が組み合わさって症状を増幅させている場合もあります。
そのような場合は神経の血流を改善させる治療にトリガーポイント療法を組み合わせることで、より劇的な効果が得られる患者さんもいらっしゃいます。
筋肉(トリガーポイント)が原因の場合は画像検査には映らないので、丁寧に触診する必要があります。


脊柱管狭窄症と診断された方は、触診で確認ずみでしょうか?
忙しい病院の外来では時間的に困難な場合が多く、この点は鍼灸師でないと鑑別は困難かと思います。
神経の血流を改善すべきなのか?トリガーポイントからの痛みなのか?また混在しているのか?などを理学所見を丁寧に聴取し、治療することで精度効果は増大します。
まず手術ではなく、保存療法で最も効果的だと研究で明らかになっている鍼灸治療を試してみませんか。


〈まとめ〉
脊柱管狭窄症は一部を除き、保存療法が選択される。
その保存療法でもっとも効果的であるのは鍼灸治療である。
鍼灸治療は障害されている神経の血流が改善することで症状を消失させる。
中には筋肉の凝り(トリガーポイント)が原因のこともある。
画像診断のみではなく触診を含む理学所見を聴取すべきである。
手術を選択する前に鍼灸治療を試みるべきである。


当院の場合
通院頻度は最初の2週間は3回/週の治療が必要となります。その後は2回/週を目安に、3か月程度の治療期間が必要になります。
ただしトリガーポイントが原因として考えられる場合には2回~1回/週で1か月程度で症状は消失するでしょう。

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