難聴・耳鳴・めまい

難聴

突発性難聴


突然に耳が聞こえなくなる疾患で、時に回転性のめまいを伴う場合もあります。
原因はウイルス説・循環不全説などありますが、詳細はいまだ不明です。
発症1週間以内に治療を開始することが非常に重要とされており、まずはステロイドパルス療法が施行されます。

医療機関によりディブラーゼ投与、星状神経節ブロック、高圧酸素療法なども併用される場合もあります。
ステロイドパルス療法を約2週間程度おこない、続けて血流改善目的で投薬治療が継続・経過観察されるのが一般的です。


この2週間で聴力の改善が認められる場合には予後良好であるとされる一方、聴力の改善が不変な場合には予後不良な場合が多いとされています。
患者さんはビタミン剤等を服用しながら定期的な標準純音聴力検査をおこなうというのが一般的です。


さてここまでは耳鼻科での治療の流れを説明させていただきました。
まずは聴力の改善を目指します!


一番不快に思われるのは会話が聞き取れないことだとおっしゃる方が多いようです。人間の会話は下記のように1000Hzを中心とした領域の聴力が重要であることがわかります。したがってこの1000Hz周辺領域の聴力が改善すれば日常生活上の負担が軽減することになります。ただし蝸牛の解剖学構造上、低音領域のほうが改善しやすい傾向にありますので、聴力の変動を観察しながら鍼灸治療をおこなっていきます。

〈突発性難聴でつらいのは聴力の低下だけではありません〉

これまで突発性難聴の患者さんを数多く見させていただきましたが、患者さんがつらいと感じる症状は聴力の低下(難聴)のみではありません。むしろ難聴発症時より下記のような付随する症状にとても苦しんでいる例が多いようです。
音が響いて聞こえる(リクルートメント現象)
耳が詰まった感じがする(耳閉感)
耳から異音が聞こえる(耳鳴)
ふわふわとした感じがする(浮動性めまい感)
これらの症状も実はとても不快なのです。
したがって治療目標・計画は以下のように設定しています
聴力の改善が第一目標。発症から約3か月間は耳鼻科でおこなわれる標準純音聴力検査を参考にし、効果を判定しながら聴力の改善目的に鍼灸治療をおこないます。聴力が少しずつでも改善している場合であれば継続して治療をおこないます。
付随する症状に対しても同時にアプローチし、消失を目指します。付随している症状は聴力の低下による内耳から聴覚野にいたるまでの補正現象の一つですので、補正が完了し症状が消失するように内耳の神経~聴覚野に至る神経系統に刺激を与え、早期の正常化を目指します。
聴力改善を目標としますが、残念ながら聴力低下のまま固定した場合でも、付随する症状が消失するだけで日常生活の質は大きく改善します。
当院の鍼灸治療
中枢神経の血流を改善、および自律神経の偏り(主に交感神経優位)を是正するようなポイントに鍼灸治療をおこないます。

当院では特に顎に着目し、顎関節の機能不全を改善するような方法を用いることで、耳疾患に対応していきます。

下記の項目が当てはまる場合は当院の鍼灸治療が効果的かもしれません。


・舌の辺縁部に歯の痕がついている。


・エラが張っているように見える

・口を大きく開けにくい


・首・肩がこっている。

〈その他〉
・どちらかの肩が下がっている。
・時々頭痛になることがある。

当てはまる場合には当院の鍼灸治療が効果的かもしれません。


急性低音障害型感音性難聴の症例


28才女性
【初診日】X年 4/21

【現病歴】
4/16に耳鳴り(キーン、時にゴーン)が始まった。その前日にプールで泳いだせいか?と思っていたが少しずつテレビや会話の音が聞きづらく
なってき。また耳鳴りも強くなってきたので4/20に耳鼻科受診。聴力検査の結果、左の急性低音障害型感音性難聴と診断される。
ステロイド内服を処方され安静を指示された。以前に当院で鍼灸治療の経験があり、体に良いと経験していたので併用したほうが良いのではないかと考え来院される。


4/24聴力検査にて10db
5/1には健側とほぼ同じになったので耳鼻科の治療は終了。


しかしながら耳鳴りや体のだるさなどの症状が残存しているので、鍼灸治療は継続。
5/19には耳鳴りも消失しいたので耳に関する治療は計6回で終了。

※解説

一般的にこの疾患は突発性難聴とは異なり聴力回復しやすい予後良好な疾患と言われている。本症例も早期に聴力の回復を認めた。
これは低音域は比較的改善しやすいこと、早期にステロイド療法を開始したこと、同時期に鍼灸治療を併用できたことがあげられる。
しかしながら耳鳴りやふわふわ感、易疲労感は聴力が回復した後も残存しており、付随する症状に対してはビタミン剤処方による経過観察が一般的である。しかしその症状も鍼灸治療継続にて改善していった。
鍼灸は聴力回復のみならず、付随する症状にも効果的なことが分かる。
その後も定期的に体のメンテナンスを目的とした治療により再発はしていない。


音響外傷による難聴



耳鳴

〈たかが耳鳴り・されど耳鳴り〉

耳鳴りに苦しんだことのない人にとっては『たかが耳鳴りじゃない?』と耳鳴りで苦しむなんてと想像できないかもしれません。
しかし耳鳴りは成人の15パーセントがなんらかの耳鳴りを経験、そのうちの20%が生活に支障をきたすほどの耳鳴りで悩まされているといわれています。
人数にすると約300万人です。
下記の研究でも耳鳴りと抑うつとも関連性が深いという結果になっており、『たかが耳鳴り・されど耳鳴り』ともいえます。
※『一般地域在住中高年齢者における耳鳴の頻度と睡眠状態・抑うつの関連について』
安江 穂 国立長寿研究センター 耳鼻咽喉科
さて耳鳴りが気になると一般的には耳鼻咽喉科を受診されます。背景に重篤な疾患がなければ多くの場合は異常なしとの診断がつきます。人により耳鼻科を数件はしごする場合もあります。
ビタミン剤を処方されるもあまり効果がなく『慣れるしかない』といわれて途方に暮れるというのがこれまで出会ったきた患者さんです。
中にはうつ状態になり日常生活の質が著しく低下している人もいます。
アメリカの耳鳴ガイドラインでは認知行動療法のみ推奨されており、日本で一般的におこなわれている薬物療法やサプリメントは推奨しない治療法となっています。
これらからは医学的にいうと決定的に効果のある治療法はまだないというのが現状なのです。
そこで鍼灸治療で耳鳴りを改善、または意識下に置くようになることで日常生活をエンジョイできるようにしませんか?というのがこのブログの趣旨になります。
〈耳鳴とは〉
『明らかな体外音源がない状態で感じる音覚』と定義されています。
耳鳴は高い音や低い音、それらが混雑している場合、時間によって変化する場合、いつも同じ側の場合もあれば、両側に感じる場合などもあり、人それぞれで多様な症状を示すのが特徴とも言えます。
特徴的なのはその耳鳴があっても全く気にならない人もいれば、とても不快で苦痛のためにうつを併発して社会生活が困難になってしまう人もいます。
したがって治療対象となるのは耳鳴が存在し、それが日常生活において著しく質の低下に関与している場合となります。

〈耳鳴は耳が鳴るのではなく、脳が鳴っている〉

音=空気の振動⇒外耳道⇒鼓膜⇒耳小骨が振動⇒内耳で音の振動のエネルギーを電気的エネルギーである神経の活動電位に変換⇒蝸牛神経⇒脳幹(周波数を解析)
⇒大脳皮質(高次な音を分析)※(言葉の理解や安全な音なのか危険な音なのかなどの判断)
このどこの部分で障害が起きても耳鳴りが起きる可能性はありますが、多くは外耳や中耳が原因で生じる耳鳴りは少なく、蝸牛という感覚器から大脳皮質中枢の神経障害によるものが多いと考えられています。
したがって耳から音が鳴っているように感じていますが、実際には最終的に音を認識する脳・中枢部分が通常では認識しない電気信号を感知してしまっている状態が耳鳴りなのです。

なぜ鍼灸治療が耳鳴に効くのか?

図はJastreboffによる神経生理学的耳鳴り理論に明らかになっている鍼灸刺激の研究をあてはめたものです。
鍼灸刺激が大脳皮質や辺縁系、自律神経、発生源になっている耳の循環改善などにも作用して耳鳴の悪循環を断ち切ることで耳鳴が改善していくものと推測されます。

耳鳴りの鍼灸治療の研究紹介

~院長発表抄録~
鍼灸治療により耳鳴が改善した2症例 2017 日本東洋医学会北陸支部集会

~明治国際医療大学~
頸部・手部の圧刺激や円皮鍼による刺激が自覚的耳鳴に与える影響の基礎的研究
頸部・手部の鍼刺激が自覚的耳鳴に与える影響の基礎研究
頸部・顔面部などの体性感覚刺激が自覚的耳鳴に与える影響

メニエール病


メニエール病とは回転性めまい発作+耳症状(難聴・耳閉塞感・耳鳴等)が重なりそれが反復するもの。
めまいだけの場合や耳症状のだけ場合も当てはまることもあります。(非定型例といいます)

この病気は
⇒初期は低音部の聴力低下(めまいは数時間から十数時間で改善)
⇒聴力は比較的すぐ改善する
⇒しばらくして再び発作
⇒低音部の聴力低下(めまいは数時間から十数時間で改善)
⇒これを繰り返すと聴力が改善しにくくなる
⇒悪い耳だけでなく良いほうの聴力も低下して元に戻らなくなる(最終形)
このころにはめまいは起こらなくなる。

このようにこの病気の怖いのはめまいではなく、聴力低下が固定してしまうように進行する病気ということ。

これを防ぐには早期の診断と治療が必要と言われていますが、
いったんめまい発作が起きると病院でおこなう治療はどこでもほとんど同じで対症療法にすぎません。

したがって根本的治療は非発作時にあるといえます。

いかに発作を起こさないようにするか!
実はこれがポイントなのです。

このメニエール病と鍼灸治療は相性が良いのです。

メニエール病に対しての鍼灸治療の有効性は、多数報告されております。

古くは1979年の菊池らの『薬物療法に抵抗を示したメニエール病65例』
最近では門倉らのメニエール病含む『末梢性めまい7例』2008年
この2本は医師が発表したものです。

臨床的にもとても効果がありますので、鍼灸治療をうけてみてください。