低音型難聴の鍼灸
急性低音障害型感音性難聴(低音型難聴)は低音領域の聴力が低下する病気です。
耳鼻科では上記と診断されている場合がありますが、現在ではメニエール病の蝸牛型とするようになっています。
このメニエール病とは回転性めまい発作+耳症状(難聴・耳閉塞感・耳鳴等)が重なりそれが反復するもの。
めまいだけの場合や耳症状のだけ場合も当てはまることもあります。(非定型例といいます)
どのような経過をたどるのか?
この病気は
⇒初期は低音部の聴力低下(めまいは数時間から十数時間で改善)
⇒聴力は比較的すぐ改善する
⇒しばらくして再び発作
⇒低音部の聴力低下(めまいは数時間から十数時間で改善)
⇒これを繰り返すと聴力が改善しにくくなる
⇒悪い耳だけでなく良いほうの聴力も低下して元に戻らなくなる(最終形)
このころにはめまいは起こらなくなる。
このようにこの病気が怖いのは、めまいではなく、聴力低下が固定してしまうように進行する病気ということ。
これを防ぐには早期の診断と治療が必要と言われていますが、
いったんめまい発作が起きると病院でおこなう治療はどこでもほとんど同じで対症療法にすぎません。
したがって根本的治療は非発作時にあるといえます。
いかに発作を起こさないようにするか!
実はこれがポイントなのです。
まずはセルフチェック
首・肩がこる。特に起床時しばらくは特にその傾向にある。
エラがはっているように見える
口が開けにくい
舌の周辺がガタガタになっている
以上のような所見があれば特に当院の鍼灸治療が有効です。
難聴や耳鳴、めまい感などが1回/週程度の頻度で通院が必要です。
それらが消失すれば1回から2回/月程度の頻度で経過を観察し、徐々に通院感覚を開けていきます。
鍼灸治療前
鍼灸治療後
鍼灸治療以外でご自分でできること
基本的にはストレス源の排除と有酸素運動になります。以下の論文を掲載しておきます。
~論文紹介~
生活指導と有酸素運動によるメニエール病の治療
対象は231名(めまいの予後判定は内130名)
①めまいの経過②聴力の経過を観察
観察期間1カ月~1年以上
治療としておこなったこと
生活指導の改善と有酸素運動、そして投薬治療の中止。
【結果】
①めまい・・・約8割が良好(消失・ほとんどない)
②聴力・・・初診時低音障害の改善47.7%、高音33.3%、全音域26.6%
有酸素運動が内耳循環を改善させリンパ水腫を軽減させた可能性を示唆
生活改善に関してかなりきつい内容。
元々メニエール病とストレスは大きく関係しています。
そもそもストレスが関与する病気はストレス源を排除するのが一番の治療。
この研究では男性は職場関連・女性は家族・家庭関連のストレスが多かったとのこと。
しかしこの種のストレス源排除って現実的には結構難しいことが多い。
じゃあ仕事変わればいいの?
じゃあ家庭環境変えればいいの?(離婚?別居?引っ越し?)
そんな簡単にできませんよね~、だから悩むのです。
また運動に関しては
心拍数100-120/分の運動を1時間以上週3回以上おこなっております。
この運動自体も結構な運動量ですが、その時間を作ること自体が生活改善になっているようにも思います。
これらのことで、内耳血流、脳報酬系が改善し、メニエールが改善する可能性が論じられていますがこの論文のように生活改善や運動が可能な人は鍼灸する必要はないと思います。
しかしそれが難しい方は鍼灸治療を試してみましょう。
~院長耳鼻科領域発表実績~
鍼灸治療により耳鳴が改善した2症例 2017 日本東洋医学会北陸支部集会
鍼灸と漢方を併用した音響外傷による急性両側難聴の1症例 2016 日本東洋医学会北陸支部集会
メニエール病に対する鍼灸治療経験 2015 日本東洋医学会北陸支部集会
医道の日本 2017 12月号 耳鼻科疾患特集 執筆