出産後に母乳の出が悪いことを専門的な用語で乳汁分泌不全といいます。
原因は大きく分けて
①中枢性・・・下垂体の機能の異常により低下しプロラクチン低値によるのが原因
※母乳を作る元のホルモンの出が悪い場合
②末梢性・・・乳腺組織の発育不全、陥没乳頭、扁平乳頭により排出が障害されたもの
※乳首やその中の組織になんらかの問題がある場合
③児性・・・・子供の吸引力の低下、口腔の異常による哺乳障害
※母乳を吸う子供の問題
④社会性・・・仕事の都合などで母乳保育への意欲がないなどの社会的要因
※仕事で授乳できない、胸の形が崩れるので授乳したくないなどの理由 先天的な問題がなく、社会的条件をクリアできる場合は治療対象となるといえます。
治療方法
治療方法は大きく分けて2つ。
①乳房マッサージや他の物理療法
②薬物療法この①の他の物理療法の中に鍼灸治療が入ります。
明治鍼灸大学(現、明治国際医療大学)の矢野、笹岡らのまとめによると 立浪たか子らの研究では99例を対象にした研究があり、
乳房マッサージ群(50例)と乳房マッサージにツボ刺激を加えた群(49例)との比較研究です。退院後及び出産後1ケ月の乳汁分泌について検討した論文です。
結果、ツボ刺激を加えた群で1回哺乳量60ml以上(充足)に達した症例は有意に多かったと報告されています。
ツボ刺激は円皮鍼で4日~7日貼付
A-中府・三陰交・足三里
B-中府・膻中・少沢
C-中府・膻中・足三里
もっとも効果的だったものはBであった。 その他、和田らの研究や藤木らの研究で用いられた経穴は 膻中・天宗・肩井・内関・合谷・乳根etcです。あくまでも助産師さんの乳房マッサージなどと併用することが重要です。
またツボ刺激は円皮鍼(ピップエレキバンのようなもの)で非常に軽い刺激ですのでせんねん灸やご主人のマッサージ、ツボ押し棒などでも十分効果が期待できます。当院ではツボへの鍼灸治療のみを行い、セルフケアの指導をさせていただきます。