心身の疲労が抜けない、うつ症状、食欲がない、睡眠不良、抜け毛、母乳が出ない、生理が来ない、2人目不妊、腰痛、肩こり、腱鞘炎、頭痛など産後に多い症状に対して鍼灸でケアを行います。
産後は出産時の影響でさまざまな影響が出ます。これは女性が妊娠中から出産後までドラスティックに体の環境が変化することに起因します。また近年、高齢の出産が増加傾向にあることからこの変化に対応できない、あるいは対応するまでに時間がかかる(産後の回復の遅れ)などから日常生活もままならないぐらいにつらくなる方も多いです。
また授乳中の場合はお母さんが摂取した栄養で母乳を作り分け与えることになりますので、より一層体調の回復は遅れることになります。またこの時期は投薬治療も限られますので、ただひたすら「体が楽になる日をじっと待つ」という方も少なくありません。
これらを総称して産後のマイナートラブルといいます。
マイナートラブル全般に対して
東洋医学では産後の状態を気虚・血虚・陰虚などが多くみられるとされています。心身の疲労、抜け毛、食欲不振、などもこれらが原因でいずれも妊娠、出産により母体のエネルギーが枯渇した状態が原因です。
そこで鍼灸療法ではそれらを補うようなツボに施術しエネルギーを補填することで体力の回復を図ります。
その他よくある症状について
産後の腰痛
原因
出産時の子宮骨盤の戻りが悪いこと
骨盤底筋や腹筋などの筋力が低下していることを背景とした、繰り返し行う赤ちゃんのベッド移乗などによる腰部への負担などが挙げられます。中には代償作用による大腰筋や臀筋群が痛みを出していることもあります。
鍼灸ケア
負担になっている腰部への施術+体力回復のための施術を組み合わせることで症状の改善を目指します。
よくある質問
Q、産後の骨盤矯正は必要ですか?
A、妊娠中から産後にかけて腰痛が発症した時、骨盤の異常として考えられることが多い。
骨盤の緩み、歪みなどと表現され産後の骨盤矯正が必須かのような宣伝文句も拝見されます。
本当に産後の腰痛は骨盤が原因なのでしょうか?
下記の報告を参考にしながら考えてみます。
産褥期の腰痛に関する研究:中澤貴代
この研究は質問紙法で有効回答数253/598で検討。
ちなみに産褥期とは出産後、妊娠前の体に戻るまでの期間をいいます。
一般的には6週から8週と言われています。
さて腰痛はいつから発症する人が多いのでしょうか?
下記はそれを表しています。
妊娠前から腰痛があった人が最も多く、妊娠を契機に腰痛を発症した人もついで多くあわせて41.9%になっています。
これらの人は産褥期においても腰痛が持続する傾向にあることがわかります。
次に下記のグラフを見てみましょう。
私が注目したのは恥骨結合部と鼠蹊部の痛みを訴えている群です。
妊娠前よりも妊娠期や分娩後1週間の方がグラフが高値になっているのがわかります。
この期間に痛かったと答えた人が多いということです。
また分娩後1ヶ月後には低値になり、痛いという人は少なくなっているということになります。
つまり恥骨結合部と鼠蹊部の痛みに関しては明らかに妊娠から出産までの間に何らかの影響で痛みが出現し、その影響は分娩後1ヶ月時には少なくなるということを表していると思われます。
これがリラキシンなどの作用により靭帯が弛緩し骨盤輪由来の痛みだと考えます。
産後にリラキシンの分泌は急速に減少し、約1ヶ月で靭帯の弛緩はもとに戻ると言われていますので、まさに一致します。
また分娩様式では腰痛の出現率に差はなかったと本文中にあることから出産時の影響はあまりないようです。
ここで仙腸関節部の痛みについて考えます。
上記のグラフでもこの部に痛みを訴える人がかなりいることがわかります。
筆者は仙腸関節部に痛みを訴える=仙腸関節由来の痛みとしていますが、ここに間違いがあります。
仙腸関節部に痛みを訴えている症例でも多裂筋や大殿筋や中殿筋、梨状筋、また脊髄神経の後枝由来の痛みのことの方が圧倒的に多いということは臨床をしているものであれば疑う余地はないでしょう。
したがって仙腸関節に痛みを訴える人の全てが骨盤輪由来の疼痛ではないということを頭に入れておくことが重要だと考えます。
そのほかの要因として、
産後の腰痛については骨盤底筋や腹筋の筋力低下
抱っこや授乳姿勢、ベッド移乗などに伴う腰殿部への負荷
睡眠不良による疲労
授乳による体力低下
などの複数の要因が重なって産後の腰痛として発症していると言われています。まとめると
産後の腰痛について、妊娠前や妊娠を契機に腰痛を発症する人が多く、そのような場合は産褥期まで継続する。
恥骨結合部と鼠蹊部の痛みは骨盤輪由来の疼痛の可能性が高いが産後1ヶ月程度で改善傾向を示す。
仙腸関節の痛みを訴える人も多いが、全てが仙腸関節(骨盤輪)由来ではない可能性が高い。
産後の腰痛を訴える場合は、育児期特有の背景もあるため総合的視点で考えなければいけないですね。
最後にこの研究ではそれぞれどのように対処しているかについて腹帯(42.2%)、腰痛体操(26.2%)、骨盤ベルト(6.7%)医療機関(3.1%)などであったとし、希望する対処法としてはマッサージ(51.0%)が1位だったことも紹介しています。あん摩マッサージ指圧師の先生にとってはチャンスかもしれません。鍼灸師にとってはセルフ灸などで対処できることが浸透していないようです。引き続きの活動が必要かもしれませんね。
本日も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
頭痛
授乳姿勢や抱っこ姿勢などにより首や肩の筋肉の緊張が原因で頭痛を起こすことがあります。