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院長コラム
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耳鳴のメカニズムと鍼灸
耳鳴とは外部からの音刺激がないのに 耳に音を感じることと定義されています。
成人の15%がなんらかの耳鳴を経験し、そのうち20%が生活に支障をきたすほどの耳鳴で悩まされているとされています。人数にすると約300万人になります。
耳鳴には自覚耳鳴と他覚的耳鳴に分類されますがほとんどは自覚的耳鳴です。
他覚的耳鳴には血管音やアブミ骨筋などが原因のことが多いとされています。
そこでここでは一般的な自覚的耳鳴にしぼって紹介します。
【耳鳴の原因】
鼓膜~中耳~内耳~聴覚神経~大脳聴覚野のどの部分にトラブルが起きてもおこりますが中耳炎や鼓膜のトラブルなど原因が明確な場合を除くと、耳鳴の原因は以下の図のようなメカニズムで発症するといわれています。
高音部(黄色)のメモリが低下しています。これは高音部の聴力が低下していることを表した写真です。
これまで聞こえていた聴力が低下したので、大脳の聴覚野が感度を上げようとして興奮した結果、通常では拾うことのなかった電気信号まで拾うようになり、それが耳鳴音として聞こえてしまうというのがメカニズムです。
したがって耳鳴は耳が鳴っているのではなく、脳が鳴っていると理解しましょう。
さて、耳鳴で悩んでいる人以外耳鳴は感じないのでしょうか?
実は耳鳴は静かな無音の環境下ではほとんどの人が耳鳴を感じています。
問題はそれが常に意識してしまうのか?それが不快に感じてしまうか?なのです。
耳鳴で苦しんでいる人は
- 大脳辺縁系の海馬で不快な経験として記憶される
- ⇒扁桃体では不快感や恐怖として認識
- ⇒扁桃体は視床下部を通じて自律神経に「退避行動」を取るように命令
- ⇒退避行動は、心拍数の増加、血圧の上昇など、危険に対して身構えているようなもの
- ⇒緊張を強いられた状態
- ⇒自律神経の緊張状態は、大脳皮質を刺激
- ⇒大脳辺縁系へ不快なストレスを伴った信号が巡り巡っていくという悪循環を来たす。
このように耳が問題なのではなく、脳が複雑に関与しているのが耳鳴なのです。
まずは専門医で以下のような疾患がないか診察を受けてください。
- メニエール病
・突発性難聴
・老人性難聴
・ラムゼイ・ハント病
・薬剤性内耳障害
・自律神経失調症
・外耳道炎
・耳硬化症、中耳炎、鼓膜炎
・耳管機能不全、耳管炎
・聴神経腫瘍、聴神経炎
・脳の外傷、脳腫瘍、脳出血、脳幹梗塞上記の疾患がない場合、西洋医学的治療は限られていますので、鍼灸治療が有効かもしれません。
鍼灸治療では下記のような効果が期待できます。
内耳の血液循環改善
聴神経の血流改善
大脳辺縁系や大脳皮質の異常興奮の鎮静化
自律神経の調整
などを目的に行います。
また耳鳴の発症原因が、
突発性難聴やメニエール病の蝸牛型などによる聴力の低下なのか?
うつ・自律神経の異常によるものなのか?
高齢による聴力低下なのか?
風邪や中耳炎による一過性のものなのか?
などを鑑別し、それぞれに対応していきます。
耳鼻科での治療については限られており、『気のせいなので慣れるしかない』と放置されてしまうことが多いようです。
上記のような作用機序で鍼灸療法は耳鳴に対しては有効な手段となります。
突発性難聴の発症約2ヶ月後より施術を開始
【要旨】
突発性難聴発症
約1ヶ月半後に耳鼻科受診→標準治療開始
※ゴールデンタイムを逃す
聴力変化なし
約2ヶ月後より鍼灸施術開始
※聴力固定の可能性大
ただし低音領域のみであるため改善の可能性も僅かにあり
【症例】
56才 女性
【主訴】突発性難聴
【初検】8月8日
【現病歴】
6月上旬に左耳の聞こえずらさを自覚。耳閉感・耳鳴り・音響
7月22日 耳鼻科受診
低音部の聴力低下が認められます。
ステロイド1週間、その後ビタミン剤という標準治療→経過観察
聴力の改善が見られないため8月8日鍼灸施術を希望され来院。
1回/週の頻度で鍼灸施術を開始。
8月18日
鍼灸施術は2回済み
あまり変化はないようですね。
この受診時の主治医コメント
『おそらくこれ以上は良くならないと思います』とのこと。
鍼灸開始して間がないこともあり、もう3週間ビタミン剤の処方と鍼灸施術を併用してみることに。
当院の方針も3週間後に聴力の変化を認めないようなら聴力固定とし、付随する症状(耳閉塞感・耳鳴等)への施術に変更することとしました。
9月8日
耳鼻科医コメント
『聴力が改善傾向にあるので、もう3週間処方を継続』とのこと。
250Hzと500Hzで約15d B改善しています。
僅か15dBのようにも思えますが、60dB代と40dB代とでは聞きずらさはかなり違ってきます。
これからどこまで改善するかはまだわかりませんが、聴力が動いている間は鍼灸施術を継続すると良いでしょう。
ゴールデンタイムを逃した症例だったが鍼灸施術を開始してから改善
- 聴力低下が高音部に比較して血流の豊富な低音部領域だったこと
- 当院の鍼灸施術が的確であったこと
- 瘀血の証であったことで血流改善による聴力回復が可能であったこと
- スーパーライザーによる星状神経節照射を的確に行ったこと
などが要因と考えます。
全ての人が治癒、改善するということは残念ながらありません。
しかし鍼灸施術によりその可能性が高まれば・・・
今より少しでも聴力が改善すれば・・・
聴力が固定してしまう前に一度鍼灸療法を試してみたらいかがでしょうか?
妊娠と抗ストレス作用
妊活施術を行う前の初回の面接時に必ず説明することを少しずつ書いていこうと思います。
今日は
『なぜ妊活に鍼灸が良いのでしょうか?』
です。
鍼灸のメカニズムから考えるとたくさんあります。
その中でも一番は
『鍼灸には抗ストレス作用がある』ということ。
もれなく妊活さんは『妊活』を始めた瞬間からストレスとの共存生活が始まります。
これがステップアップするにつれてまた妊活期間が長くなるにつれてストレスの度合いが強くなります。
妊活にストレスはマイナスということを野生動物を例にして紹介します。※人間も動物なので基本的には同じと思ってください。
野生動物がストレスを感じる時は敵が目の前にいること、すなわち生死がかかった状態です。
この時、動物は敵から逃げるか闘うかの2択になります。
したがって血液の流れを含む生体の機能は骨格筋が優先され内臓への働きは抑制されます。
逃げるためには早い足が必要、
闘うためには強力な力が必要。
内臓の動きなんかは二の次ですよね。
言い換えると妊娠なんて二の次の状態。
妊活中はこの状態がずっと続いていることとも言えます。
『たまにはリラックスして〜』とか
『ストレスためないように〜』とかアドバイスされるように、
ご本人や周囲の人たちも含め、みなさんストレスが一番悪いとわかっているんですよね。
しかし妊娠するか妊活をやめるか以外はストレスは無くなりません。
これが高度生殖医学の中で見落とされているところであり、対処できていないところでもあります。
そこで鍼灸療法の出番です。
鍼灸療法の効果の一つに『抗ストレス効果』があることが各種の指標で証明されています。
したがって頭はストレスいっぱいには変わりませんが、体はストレスフリーの状態にしてあげることができる。
その状態をキープすることで良質の卵と子宮内膜が得られ、結果として妊娠率の上乗せができる可能性があるというのが妊活鍼灸を受ける大きなメリットの一つなのです。
鍼灸療法の抗ストレス作用。
論文も本当にたくさんありますので、ここでは紹介しません。
『鍼灸 抗ストレス』なんかでググってみてください。
本日も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
スーパーライザーによる妊活施術
当院では鍼を用いず、スーパーライザーと温灸のみで行う妊活施術外来を開始しました。
スーパーライザーとは
直線偏光近赤外線治療器といい身体の深部まで光を到達させることのできる治療器のことです。
通常の赤外線治療器は皮膚でほぼシャットアウトされるので、深部の筋肉はもちろん神経や血管、動脈・静脈・リンパなどに直接刺激することはできませんでした。
しかしスーパーライザーは体表から数センチまで光線が届きますので直接的な刺激が可能となる治療機器です。
すでに多くの生殖クリニックで取り入れられている治療器で、不妊治療の現場では注目されていました。
一般的な赤外線治療器は皮膚や筋肉までしか光が届かないのですが、スーパーライザーは筋肉よりさらに深部にある自律神経や動脈、静脈、リンパなどへのアプローチが可能となる最新の光線治療器です。
上記の特性とこれまで当院が妊活鍼灸で得た治験を融合させてより効果的な施術を目指すこととしました。
実際に低出力レーザー(LTTT)療法による有効性が既に報告されております。
この低出力レーザーよりもスーパーライザーの方が体表からの深達度が大きいためより有効性は大きいと思われます。
スーパーライザーによる具体的な施術について
星状神経節照射による交感神経ブロック
星状神経節照射による交感神経ブロックにより副交感神経優位にさせてホルモン異常や血流改善を目指します。
ほぼ全ての妊活治療中の方はストレス状態となっています。タイミングレベルの方からすでにストレスとの共存生活がスタートし、ステップアップするにつれてストレス状態は大きくなります。これを自律神経の観点から言うと交感神経優位といいます。
ちなみにこの反対であるリラックス状態(ストレスフリー)は副交感神経優位といいます。妊活そのものを止めて2人の生活を選択した、とたんに妊娠したというのはまさにストレスフリーの状態が妊娠に作用した典型例なのです。
このストレス状態である交感神経優位状態は内臓の血管を収縮させ、結果として卵巣動脈や子宮動脈の血流悪化を招き、良質の卵子・子宮内膜の形成に悪影響を及ぼします。
また自律神経とホルモンはセットとして考えることがセオリーなので自律神経が乱れていれば必ずホルモンも乱れてくるのが常なのです。
そこでこの交感神経をブロックすることで強制的に副交感神経を優位にし、内臓血管の血流を改善、ホルモンを正常化させることで卵子子宮内膜に好影響を及ぼすことが可能になります。
スーパーライザーによるツボ照射
従来より妊活施術で用いていたツボにスーパーライザー照射することでし鍼を施術した時と似たような効果を目指します。
いわゆるツボと呼ばれる部位には神経終末が密になっていることや、その筋膜上にはポリモーダル受容器が存在するので、温熱刺激にも反応する部位ともいえます。そこで卵巣や子宮の血流などに関与するツボに照射することで血流改善効果が期待できます。
温灸による施術
東洋医学的アプローチを行うときに用います。
東洋医学的分類
不妊の状態を「気虚・気滞・瘀血・血虚・水毒」というカテゴリーに分類し、施術をおこなうことで妊娠しやすい体に変えようとするものです。
そのアプローチには温灸を使いツボを刺激していきます。
スーパーライザーと温灸による施術の効果については鍼灸施術併用に比べて若干落ちますが、鍼を刺されることがどうしても嫌な方などはこちらの方で施術を受けられてはいかがでしょうか?
片頭痛には鍼灸がおすすめ
日本で片頭痛に悩んでいる方は人口のは8%といわれ、QOL(生活の質)を著しく低下させます。
一般的な治療法としてはトリプタン製剤が有用ですが、あまり効果がない場合や投薬過多により薬物乱用性頭痛の存在も指摘されています。トリプタン製剤で反応しにくい人に対しての新薬もまた研究されるでしょう。しかしまたそれも効果がない人も必ず出てくるでしょう。
本記事ではトリプタン製剤などの投薬治療に反応しにくい(効果がない)人や投薬でコントロールできている人でも投薬の回数を減らしたい、最近頭痛発作の頻度が短くなってきた、などの人に対して紹介するものです。
なぜ片頭痛が鍼灸で良くなるのでしょうか?
片頭痛は必ず最初にあるスイッチがONになることにより発作が始ます。
このスイッチは誘発因子によって起こることは知られています。
チョコレートやチーズ、アルコールなどの食品、月経、ストレス、睡眠不足・過剰など人それぞれあると思います。
その誘発因子プラス背景因子としてこれまで見逃されていたポイントが今回紹介する目的です。
片頭痛を楽にしたければ肩こりを解消しよう!
首や肩の筋肉のコリを処理して、柔らかくしておくと片頭痛のスイッチがONに入りずらくなります。結果として片頭痛の頻度や程度は軽減することが明らかになっています。
専門的なメカニズムは記事の最後に論文を紹介してありますので詳細を知りたい方はそちらの方へどうぞ。
普段から首・肩こりの自覚がある場合や自覚はないが、美容院などで触ってもらうと硬い!と指摘されている場合も同様です。
特に特徴的な症状を紹介します。
鍼灸療法が特に有効な人の特徴
- 日頃から首・肩が凝っている人(自覚はないが美容院なので硬いと言われたことがある人)
- 朝、起床直後より首やかたが硬いと感じる人
- 顎が疲れて口が開きづらい人
- 自身の舌の周囲がギザギザになっている人
- パソコンを見ていて疲れ目や目の奥の違和感が出やすい人
日頃から首・肩が凝っている人(自覚はないが美容院なので硬いと言われたことがある人)
朝、起床直後より首やかたが硬いと感じる人
顎が疲れて口が開きづらい人
エラが張っているように見える
自身の舌の周囲がギザギザになっている
パソコンを見ていて疲れ目や目の奥の違和感が出やすい人
このような症状がある人は首や肩にすでにコリが形成されていることが推測されるので、特に鍼灸療法が有効なことが多いです。
どんな施術をするのか?
頸肩部(三叉神経支配領域)のトリガーポイント(コリ)を処理し、筋肉そのものを柔らかくしていきます。また多くは自律神経の乱れも関与しているのでそれを整えるような施術も加えます。
1回/週の頻度の施術していき、経過を見て間隔を
鍼灸療法の報告
片頭痛発作予防に対する鍼治療効果 : 頭痛日数の減少と頭頸部等筋群の圧痛改善との関連について
鍼治療を一定期間継続することにより、頭痛日数が減少するとともに、頸肩部の筋群と咀嚼筋の圧痛や緊張が改善したことから、片頭痛に対する鍼治療効果はこうした筋群の圧痛を緩和することで頭痛日数が減少し、発作予防に寄与したものと考える。また、片頭痛の発作予防に対する鍼治療の作用機序は、上位頸神経や三叉神経を求心路とし、三叉神経脊髄路核を経て高位中枢に影響を及ぼし、発作予防に関与している可能性も考えられる。
基礎研究の立場から 鳥海 春樹
三叉神経領域に形成されたトリガーポイントを何らかの方法で処理すると偏頭痛発作の頻度が低下することは良く経験するところ・・・
・・・三叉神経系への慢性的侵害刺激が偏頭痛発作の前兆に関与する大脳皮質拡延性抑制の発生閾値を大きく低下させ、また発生時間を遷延させる・・・頭頸部の筋硬結や筋痛を治療する鍼治療が偏頭痛発作を抑制する経験的事実を裏付けるものである。
片頭痛に対する後頭部C2末梢神経野鍼通電療法:-天候の変化による発作の誘発が軽減された一症例-
本症例では主誘因である天候の変化による頭痛発作の誘発が軽減されたことが特徴であり、 後頭部C2末梢神経野鍼通電療法による三叉神経脊髄路核の感作の抑制が関連している可能性がある。
片頭痛の病態研究および治療に関する最近の知見より