投薬治療中にうつ病患者に鍼灸治療をおこないQOLが改善した症例 2015日本東洋医学会北陸支部集会のコピー

石川県鍼灸研究会 豊島 清史 田中 良和 常盤 和成 
【目的】ストレス社会である現代において精神疾患を有する患者は多く、開業鍼灸師の元に訪れる機会も増えている。今回、投薬治療中のうつ病患者に対し鍼灸治療をおこない約1年間経過観察した結果、QOLが改善した症例を経験したので報告する。


【症例】34才男性、会社員

【主訴】数日~1週間継続する朝起きることが困難という症状

【現病歴】X-7年ごろに時々会社を休むようになり、X-6年1月には会社を休職。その後、産業医でもある心療内科医の診察でうつ病と診断。X-6年7月に復職。しかしある日突然に朝起きることができなくなり数日~1週間欠勤するという症状が始まった。それが復職以来続いていることから鍼灸治療を希望されて来院。

【その他症状および所見】身長175cm75kg、右前頭部から側頭部にかけての頭痛、中途覚醒、喉のつまった感じ、意欲の低下、性欲の低下、胃腸障害。腹診:全体的に張っており心窩部、中脘周囲硬い、臍周囲冷たく硬い、関元虚、背候診:全体的にすじばっており右心兪~肝兪まで緊張著明、胃兪、三焦兪、腎兪、表面虚で深部緊張、右上天柱に赤い鬱血斑、前脛骨筋緊張し足は冷たい。脈状:やや浮、虚、緩、脈差:左関尺が按じて虚


【病態把握および治療方針】うつ病の症状の一つとして視床下部―下垂体-副腎系の活性化と自律神経系の調整を目的に、東洋医学的には太極療法により腎を強め肝と脾の働きを調整することとした。

【結果】1年間の欠勤日数:治療開始前40日が治療開始1年後19.5日に改善し、本人、家族共に良好なコメントが得られQOLの改善を認めた。


【考察】うつ病患者のQOL改善に対して鍼灸治療は有効な治療方法の一つになることが示唆された。