鍼灸と漢方を併用した音響外傷による急性両側難聴の1症例 2016 日本東洋医学会北陸支部集会

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石川県鍼灸研究会 ○豊島 清史・田中 良和・常盤 和成 
はしもと医院 橋本 英樹
【目的】鍼灸の臨床報告において音響外傷による急性難聴の報告は少ない。今回、鍼灸治療と漢方薬の併用にて聴力の改善を認めた症例を経験したので報告する。

【症例】23才 女性 156cm 48kg 自衛隊衛生隊所属

【初診日】X年3月19日

【主訴】難聴

【現病歴】X年2月25日射撃訓練中に突然両耳がおかしくなり、ふらつきも自覚。翌26日も同様の訓練をおこない症状悪化、近医耳鼻科受診。27日にK病院へ紹介入院、音響外傷による両側突発性難聴と診断されステロイドパルス療法を2週間おこない退院。その後経過を観察していたが症状変化せず、鍼灸治療を希望されて来院された。【症状および所見】耳元で大きな声をださないと日常会話が成立しないほどの難聴、耳鳴り、立位保持・歩行時ふらつき感、右胸鎖乳突筋緊張圧痛(+)・翳風穴周囲に軽度鬱血、腎兪虚【病態把握および治療方針】音響ストレスによる内耳の機能不全と考え、内耳の循環改善を目的とした。東洋医学的には腎虚・瘀血と考えた。治療頻度は3回/週、その他の日には自宅施灸(膈物灸)を指示。また提携医に紹介し、漢方薬を併用することとした。

【治療】方法は澤田流太極療法とし中脘・左陽池・足三里・照海・腎兪・次髎・耳門・翳風に8分灸3~5壮とした。また耳鳴りやふらつきに対して少海・外関・陽陵泉、胸鎖乳突筋の緊張に対しては散鍼を適宜使用した。自宅施灸は照海・翳風を指示した。漢方薬は折衝飲が処方された。

【結果】実治療日数40日、治療開始時平均聴力レベル左87.5dB⇒58.0dB 右71.3dB⇒41.0dBと約30dB改善。また初診時に訴えた耳鳴りは消失、ふらつき感も改善した。

【考察】音響外傷による急性難聴の症例に対して鍼灸治療と漢方薬を併用し聴力の改善を認めた。これらのことから鍼灸治療と漢方薬の併用は音響外傷による急性難聴に対して有効な治療の一つとなる可能性が示唆された。