子宮内膜症について

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とよしま鍼灸院 豊島清史

【目的】
子宮内膜症に対する鍼灸治療の報告はほとんど無い。
妊活鍼灸において子宮内膜症合併不妊は妊娠しにくい。
漢方においては一定効果があるようである。
鍼灸においても軽症例において生理痛などが改善するという報告はある。
しかし妊孕率が向上するかは不明。
原因不明の不妊に対する鍼灸治療と子宮内膜症合併不妊と同じようなアプローチでよいのだろうか?


子宮内膜症とは

子宮内膜に似た組織が子宮以外で発生・発育する病気。
有病率は生殖年齢の10人1人。
特に好発年齢が20代~40代と女性の社会的活動性が最も高い年代のためQOLの低下は個人家庭社会にとって重大な影響を及ぼす疾患である。
初潮の低年齢化・晩婚・少子化・生活様式の変化etcにより近年増加傾向
月経回数が戦前50回→戦後500回と多い。

※子宮内膜症受療患者
平成9年12.8万人
平成27年22.2万人


なにが問題になるか?

① 疼痛と②妊孕性の低下

①疼痛症状
通常子宮内膜はホルモンの影響を受け増殖し、受精卵が着床しない場合には月経として体外に排出される。その他の部位→月経として排出されない→増殖・周囲との癒着→痛み


月経困難症88%
内70%は鎮痛剤使用
鎮痛剤を使用しても日常生活に支障を来す重症例18%
月経時以外の下腹部痛・腰痛46%
性交時痛・排便痛30%
不妊30%(平均5.3年)
※平成9年度厚生省心身障害研究 「リプロダクティブヘルスからみた子宮内膜症の実態と対策に関する研究より」抜粋


子宮内膜症予後

[ビーチャム分類]
 現在、日本で使われることの多い子宮内膜症の進行の診断方法は「ビーチャム分類」というものです。これは、内診と手術を合わせて診断する方法で、Ⅰ期〜Ⅳ期の4段階に進行度を分類します。

Ⅰ期
婦人科の診察(内診)ではわからず、手術をして初めて小さな内膜症があるとわかるもの。子宮内膜症の組織が卵巣や腹膜など子宮以外の部位に点々と散らばり、成長を始めた段階です。月経に一致して剥離した組織や血液がその部位にたまり、小さい血の固まり(血腫)を作ります。これは、青黒く見えるのでブルーベリースポットとも呼ばれます。
 まだ自覚症状はほとんどなく、手術や検査で偶然発見されるケースがほとんどです。

Ⅱ期
 子宮や卵巣あるいは子宮を支える組織(靭帯)が一緒か、あるいは別々に癒着している状態。診察すると痛みを感じることがあります。
増殖と剥離を繰り返すうちに、点状だった病巣は大きく広がっていきます。このころになると、月経時の出血が増えたり、月経痛が多少強くなってきます。理想的には、この段階で治療を受けることが望まれます。
Ⅲ期
 Ⅱ期の状態に加えて、卵巣が2倍以上に大きくなっている、子宮の後ろの方で直腸や卵巣が癒着している状態。
大きく広がった子宮内膜症の組織が固まり、周囲の卵巣や卵管、腹膜、靱帯などがくっついて癒着するようになります。卵巣の中で子宮内膜症が増殖した場合には、卵巣の内部がチョコレート色の血液でいっぱいになります。これを「チョコレートのう腫」といいます。この頃になると、性交痛も現れ、月経痛がひどくなって寝込むほどの状態になる人もいます。また、稀にチョコレートのう腫が破れて中身がおなかの中に漏れてくることがあります。こうなると耐えがたい痛みが起こり、緊急手術が必要になることがあります。
Ⅳ期
 子宮内膜症が広い範囲に広がり、子宮や卵巣がひとかたまりで区別がつかなくなっている状態。
 癒着が、卵管や卵巣、子宮だけではなく、膀胱や直腸、小腸など骨盤の中にある臓器全体に広がっていきます。さらに、骨盤内外を問わず、肺などに発生することもあります。一つ一つの臓器を見分けることが難しいほど癒着がひどいこともあります。骨盤の中にある臓器が冷凍されたように一塊になってガチガチになるというので、「凍結骨盤」と呼ばれることもあります。こうなると、月経時以外でも腰痛や下腹部の痛みがひどくなり、日常の生活にも支障をきたすようになります。


【発生機序】
① 子宮内膜腹腔内逆流移植説
② 体腔上皮化生説

骨盤腹膜などにはミュラー管臓器(卵管や子宮の原基)などに分化しうる幼弱な体腔上皮が存在し、それが何らかの刺激を受けて子宮内膜へと化生するという仮説
子宮内膜が存在するにもかかわらず、月経血の流出路が閉塞しているような子宮奇形では若年にも子宮内膜症が見られる。
子宮内膜症28名子宮内膜破壊術14名無処置14名
処置群には子宮内膜症0 無処置群9名(64%)に再発
以上のことから月経血逆流も子宮内膜症の発症に重要であることが分る



子宮内膜が存在するにもかかわらず、月経血の流出路が閉塞しているような子宮奇形では若年にも子宮内膜症が見られる。
子宮内膜症28名子宮内膜破壊術14名無処置14名
処置群には子宮内膜症0 無処置群9名(64%)に再発
以上のことから月経血逆流も子宮内膜症の発症に重要であることが分る
月経血の逆流はほとんどの婦人に認められる一般的な現象。
にもかかわらず発症するのは一部。よって月経血の逆流は必要条件であるが十分条件ではなく、環境因子、遺伝的素因、正所性子宮内膜の変化、腹腔環境異常、免疫学的因子、子宮内膜組織での遺伝変化など種々の要因が関与している
③ その他


診断の流れ


確定診断は腹腔鏡や開腹などの手術が必要。しかし現実には簡単に手術をすることはでききない。そこで、問診、診察、検査などの所見を総合的に判断して、おそらく子宮内膜症であろうとする場合を「臨床子宮内膜症」とします。この診断精度を高めることが診療の第一歩として重要である。

臨床診断の診断精度は60~70%だろうと言われていますが、もちろん、医療者によってかなり上下する。
臨床子宮内膜症の約20%には腹腔鏡検査で子宮内膜症が確認されない。


臨床診断 確定診断


・問診
・外診   
・内診
・直腸診
・超音波断層撮影(エコー)
・血液検査(腫瘍マーカー:CA-125など)
・MRI(核磁気共鳴画像断層撮影)
・X-CTスキャン(放射線コンピュータ断層撮影 ・腹腔鏡手術
・組織診断

子宮内膜症は、手術をしてはじめて確定診断ができる病気で、手術以外で内膜症であろうと推定することを臨床診断といいます。確定診断である手術は、のぞくだけではなく、同時に治療も兼ねて行います。

「診断まで」

「問診」

子宮内膜症は基本的に月経時が一番痛む
PMS(月経前緊張症)などは生理前に痛みがピーク
疼痛時期の確認が重要。既婚者であれば不妊歴


「外診」外陰部の観察色素沈着や炎症を見る


「内診」は必須検査です。確定診断されていない女性に、内診もせずに子宮内膜症保険適応薬を処方しようとしたら、断りましょう。


「直腸診」は、医療者によって、また場合によって行われます(熟達した医療者が、内診で深在性病変の可能性を感じた時など)。
内診と直腸診には誰でも大なり小なりの抵抗感がありますが、子宮内膜症の場合はとても重要な診断です。


「超音波エコー」子宮内膜症の場合、腟に棒状の器具を差し込む経腟タイプがほとんどで、お腹の上から診る経腹タイプの診断程度は低い。超音波エコーで判定できる子宮内膜症は、卵巣チョコレート嚢胞、と大きくなった子宮腺筋症だけです。それでも、それが分からない医療者、他の卵巣腫瘍や筋腫と間違う医療者もいます。
「血液検査:腫瘍マーカー」は、ほぼ半分くらいの診断率しかありません。子宮内膜症があっても出たり出なかったり、子宮内膜症がなくても月経の頃は100を超えたりします。この腫瘍マーカーは、何らかの治療をした時に、その前後で計って治療効果を診るものです。数値そのものより、変化を診る検査です。
「MRIとCT」の比較をすると、子宮内膜症全般には圧倒的にMRIの方が有効ですが、がんとの区別をつけたほうがいい場合は、CTも必要になります。どちらにしても、5mm以下の病変は撮れませんので、腹膜病変や深在性病変は分かりません。また、癒着も分かりませんが、明らかな臓器の位置関係の異常が見られれば、癒着が予想されます。MRIは、20~30分ほど機械の中でじっとしていなければならないことが苦痛ですが、明らかなリスクは言われていません。CTは、放射線に被爆するリスクがある。

<2>診断の問題

臨床診断の診断精度は60~70%だろうと言われていますが、もちろん、医療者によってかなり上下する。超音波エコー、MRI、CTなどの画像診断は、医療者の技術や経験によって読影力に幅がありますし、誰もが行う内診でさえ、子宮内膜症では診断力に大きな差があります。子宮内膜症の症状を効果的に改善するための治療に結びつく、的確な臨床診断のできる医療者が、少なすぎます。例えば、卵巣チョコレート嚢胞だけ見つけて、それを薬物やアルコール固定で一時的に処置しても、それだけしかないというケースの方がめったにないので、治療として十分ではないことが多いのです。
診断があいまいだということは、そこから先の医療が危ういということではないか。日本では、臨床診断だけで保険適応治療薬が処方されることがとても多いのですが、ひょっとしたら、臨床診断の1/3は子宮内膜症ではない人かもしれません。欧米では、確定診断もなく強い治療薬を使うことはほとんどなく、臨床診断の段階で出されるのは低用量ピルや黄体ホルモンくらいです。医療者も患者も薬にあまい、薬天国日本です。
確定診断とは、厳密に言うと手術と組織診断のセット。
腹腔鏡では、同時に治療手術も加えることが多いが、全くのぞいただけだったというケースも時々聞きます。治療手術をせずにのぞくだけとは、全身麻酔をして腹腔鏡をした意味がありません。開腹では、開けて何もしないということはないでしょう。
欧米では、腹腔鏡を使った診断がよく行われていて、それが同時に第1治療にもなります。 98年のアメリカの子宮内膜症協会会員データでは、確定診断が96%もあり、その82%が腹腔鏡でしたが、96年のJEMAデータでは、確定診断が46%で、腹腔鏡は18%でした。 97年厚生省研究班データでは、確定診断は約1/4しかなく、腹腔鏡は12%とという結果。