男性不妊

男性不妊の鍼灸治療

当院では女性に対してのみではなく、男性不妊に対しての鍼灸治療もおこなっています。
精子の状態が悪いと指摘されている方、いつも顕微授精で体外受精を行っている方、2人目不妊でお悩みの方などは男性側へのアプローチが妊娠への近道かもしれません。

男性不妊の原因はさまざまですが、その中で最も多いのが精子を作る能力の低下です。
原因不明なものが40%(60~80%)と最も多く、ついで精巣静脈瘤が30~40%となっています。


原因不明なものは当然ながらこれと言った決定的な治療法がないので、サプリや漢方薬、日常生活の指導などが行われます。

精子の特徴
下記の図は何も問題の無い人でもその日の体調などにより精液所見が大きく変動することを示した図です。

また実際にAIHで採精した精子について平日仕事前に採精した精子と休日のリラックスした状態で採精した精子と比較すると、休日に採精した精子が状態がよいことは明らかになっています。

このように精子の検査で問題ない人でも状態が悪い日もあり、状態は上下するということを押させておきます。
したがって、鍼灸治療により、なるべくばらつきがないような体にしておくことが重要なことの一つともいえます。

精子の研究


さて現在、精子に対する鍼灸治療の研究から少しずつメカニズムが明らかになってきました。
① 精子の質を向上させること、
鍼灸刺激により精巣血流が改善することで質から改善しようとするもの。
精子は約3ヶ月という期間を経て作られますので、約3ヶ月鍼灸治療期間が必要です。
② 前立腺から分泌される精漿成分が改善され、精子運動率が上昇さようとするもの。
短い期間の鍼灸治療で改善が可能とされています。

引用:明治国際医療大学はり・きゅう学講座と京都府立医科大学泌尿器科学教室(以下 研究グループ)の共同研究で2018年6月15日に「日本アンドロロジー学会第37回学術大会に発表されたもの



精巣静脈瘤に対する鍼灸治療

精索静脈瘤は、一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%以上に認められます。



なぜ鍼灸なのか?
精巣静脈瘤は程度により3分類されます。このうちグレード1の軽度なものは手術をしても精液所見は変化がないとされ、手術適応とはなりません。
またグレード3で手術をおこなった結果、精液所見は改善したものの、いまだ正常値よりは低いといった場合などは経過観察のみとなることが多いようです。

したがって男性不妊に対する鍼灸治療の適応は以下の通りになります。
原因不明なもの
精巣静脈瘤のグレード1もしくは手術後

当院の治療ステップ

① 漢方専門医による漢方薬の処方
② 自宅でのセルフ灸
③ 鍼灸治療

このステップで精液所見の経過を観察していきます。

ステップ①  漢方薬

生殖クリニックでは八味丸や補中益気湯などを処方される傾向にあります。当院では提携している漢方医を紹介し、その人にあった漢方薬を処方してもらいます。
奥様がすでに当院へ通院中のご主人場合のみとさせていただいています。特に当院へいらっしゃる必要もありません。紹介状をお渡しして漢方薬を処方していただきます。
処方の内容、治療計画等は提携先の医師と共有しています。

ステップ②  セルフ灸

ツボに印をつけて、自宅でセルフ灸をおこなってもらいます。

ツボの場所 

このツボはあくまでも目安でその人それぞれで少し違います。ツボの位置がずれていると効果がすくないという点が重要です。
腰部のツボは奥様にしていただきますので、一度ご主人と来院していただく必要があります。その際、ツボへのマーキング、お灸の仕方など説明させていただきます。
初診料のみ発生します。

ステップ③  鍼灸

ステップ①~②で効果のない場合は鍼灸治療を行います。数か所の鍼とお灸、スーパーライザ―を併用して行います。通院頻度は1回/週とし、約3か月間必要になります。この間はステップ①②の手法も併用して行い、その後の精液所見の変化を検討します。

体外受精で受精卵の質が悪い、精子の状態が悪い(悪い時があった)、2人目不妊などの方は精子の状態を改善させることが妊娠への近道かもしれません。

当院の症例

ステップ③で精液所見が改善し、体外受精で妊娠出産に至った症例の精液所見の変化