卵子が改善されるまでの期間

『不妊の鍼灸治療はどのくらいの治療期間が必要なのですか』

全日本鍼灸学会の統計ではART体外受精レベルの患者さまで平均6.3ヶ月鍼灸を続けると成功率が上昇するというデータが報告されています。

よく漢方薬を飲み続けても妊娠に至るには『体質改善には半年ぐらいはかかりますよ!』
とは良く聞く話です。
どうも6ヶ月というのがキーワードのようです。
ではなぜこのぐらいの期間が必要になるのでしょうか?
『卵子の成長』という視点から少し考えてみましょう。

ここでみなさんに質問です。
『今月排卵される卵子はいつごろから卵巣で準備されるのか?』
医療関係者は当然知っていますが、一般の人ははるか昔に生物や発生学などで学んだことがあるかもしれませんね。
答えは5~6カ月前から徐々に大きくなり排卵されるその周期まで成長し続けます。
卵子は 原始卵胞、一次卵胞、二次卵胞、前胞状卵胞、(初期、中期)胞状卵胞、排卵期卵胞と成熟していきます。
原始卵胞から前胞状卵胞まででなんと3ヶ月以上もかけてゆっくり成長していきます。
前胞状卵胞から初期胞状卵胞まで約25日、そして直径が約2mm~5mmになると
Selectable follicle (選択される可能性のある卵胞)と呼ばれる状態になり、24才~33才までの人なら通常3個~11個あります。
排卵に向かう卵胞はこの中から1個が選択されて排卵されます。この間が月経開始から約2週間で排卵されるのです。
この原始卵胞にはじまり排卵されるその時に向かい少しずつ成長していくまでに実に約5~6ヶ月必要になるのです。


どうですか?約半年というキーワードとつながりましたね。
実は卵子にとっても鍼灸治療にとってもこの半年というのは非常に重要な働きを必要とする期間になります。
それにはなぜ卵はこのように長くゆっくりと成長する必要があるのでしょうか?
ということを考えると少し見えてくるように思います。

卵子がなぜゆっくりと約半年という長い時間をかけてゆっくり成長するのでしょうか?
今回はこれをすこし考えます。

卵子の減数分裂は通常の体細胞分裂と異なり非常に早いスピードで分裂をすることが知られています。
これの意味するところは・・・
通常の体細胞分裂は細胞周囲の環境に影響されながらゆっくりと分裂するのに対し、卵子の場合は周囲の影響を受けずに分裂するということです。
ということは?・・・
あらかじめ遺伝子や細胞に『分裂開始!分化開始!』の号令で一斉にスタートできるようにあらかじめ十分に準備、パワーを充填しておく必要があるということです。
大きな排卵される卵ばかりに注目しがちですが実は受精するまでの準備期間がその卵の将来にとっていかに大切か容易に想像できます。
したがって、この期間にヒートショックプロテインを増大させ、分子シャペロン機能を働かせておくかが、排卵・受精以降に重要になるということです。
この期間に鍼灸治療をおこなう意味がここにあります。

但し、卵子の成長については大きく分けて、
原始卵胞~2次卵胞まではゴナドトロピン非依存性
前胞状卵胞から胞状卵胞まではゴナドトロピン反応性発育
胞状卵胞から排卵まではゴナドトロピン依存性発育
ざっくり言うとこの3つのステージに分かれます。
どのステージから卵が鍼灸治療に反応するかで、良好胚と出会うまでの期間は変わるのでしょう。

『急がば回れ、だったわ!』
うまく妊娠した患者さまが良く言われる言葉です。
いま現在、『分割が途中で止まってしまう』『胚盤胞まで育たない』『グレードが低い』人は良質の卵子を採卵できるように準備をしっかりおこないましょう。
※この期間は病院での不妊治療を中止しましょうということではありません。
いつ良好な卵子が取れるか判らないこと、年齢的なこと等々により病院での不妊治療と併用してください。

最後に
1回2回の短期の治療で卵子の質が変わるわけではありませんが、このように質の良いタンパク質に満たされた、細胞質に満たされた状態で成長させ排卵されるその日を待ちましょう。
そのために鍼灸を活用してみてはいかがでしょうか?
良好胚に出会うまでについてとくにヒートショックプロテイン、分子シャペロン的視点から卵子に注目ついて考えてみました。

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院長のアメブロ・・・こちらでは少しライトな感じで妊活などについても書いています。

非歯原性歯痛と鍼灸のすすめ

「歯や歯周組織に問題がないと言われたのに、歯が痛む」このような経験をされたことはありませんか? その場合、もしかすると「非歯原性歯痛」かもしれません。

非歯原性歯痛とは、歯やその周囲の組織に明確な問題がないにもかかわらず感じる歯の痛みを指します。この痛みは、かつてはあまり認知されておらず、適切な診断が難しかったために、実際には必要のない根管治療や抜歯が行われることもありました。

この非歯原性歯痛には、いくつかの原因があります。その中でも、鍼灸療法が効果的とされるのは次の三つです。

  1. 筋・筋膜痛による歯痛
    咀嚼筋(噛みしめる際に使う筋肉)や顎関節、さらには首や肩の筋肉に起因する痛みです。筋筋膜性疼痛が原因の非歯原性歯痛の中で最も罹患率の高く、約45~50% を占めるとされています。この筋筋膜性が原因の歯痛は、通常の歯科治療では対処が難しいケースが多く見られます。
  2. 神経障害性疼痛による歯痛
    神経が過敏になっていることが原因で痛みが生じるケースです。このような痛みは、歯そのものに問題がないため、従来の歯科治療では解決が難しいとされています。
  3. 特発性歯痛・非定型歯痛
    明確な原因が特定できないものの、持続的な痛みが感じられる場合です。このようなケースでは、体全体のバランスを整えるアプローチが必要とされます。

鍼灸施術のアプローチ

鍼灸療法では、まず咀嚼筋や顎関節、そして首や肩のこりに対して施術を行います。肩こりが原因となっているケースも多く、患者さんが自覚していないこともありますので、これらの部位を丁寧に確認しながら施術を進めます。

また、東洋医学の観点からは、体全体のバランスを整えることが重要です。非歯原性歯痛は、歯そのものに原因がないため、身体のバランスが乱れていることが考えられます。そのため、根本原因にアプローチすることで、痛みの軽減を目指します。

もし歯の痛みが続くものの、歯科治療で解決できない場合は、ぜひ鍼灸療法を試してみてください。お体全体を整えることで、痛みの改善が期待できます。

【症例】

非歯原性歯痛に対する鍼灸療法の1症例

【目的】

歯科的に異常がないにも関わらず歯の痛みを訴える患者に対して鍼灸療法を施行し、短期間で疼痛が消失した症例を報告する。

【症例】

30才女性、[初療日]:X年6月17日、[主訴]:歯の痛み[現病歴]X年5月初旬から右上下前歯および右奥歯に疼痛が発生。歯科医で異常が見られず鎮痛剤が処方されるが、疼痛は改善せず鍼灸療法を希望して来院。

【症状および所見】

常時疼痛があり、軽度の噛みしめで増強。食事や歯磨きでは疼痛は増強しない。冷水でしみる。歯科で歯ぎしりを指摘され、マウスピースが処方されている。右咬筋軽度圧痛、右顎関節部および左右側頭筋圧痛、頸肩部緊張圧痛。

【東洋医学的所見】

上腹部腹直筋やや緊張、右胸脇苦満、左臍傍圧痛、小腹軟弱、足先冷え。実:曲泉、膈兪、肝兪。虚:足三里、脾兪、腎兪。

【施術】

肝の異常と考え、澤田流太極療法を参考に施術。足三里、三陰交、照海、右聴宮、曲泉、右合谷、肝兪、脾兪、腎兪に置鍼、天柱および風池に単刺、中脘、左陽池、照海に灸1壮。30mm18号ディスポーザブル鍼使用

【経過】

6月24日(2回目)初回の施術翌日に疼痛が顕著に軽減し2日目には消失。以降は疼痛出現することがないため歯痛に対しての施術終了。

【考察】

歯や歯周組織が疼痛発生源でないにも関わらず歯痛を感じる非歯原性歯痛の病態が注目されているものの、鍼灸療法に関する報告は少ない。日本口腔顔面痛学会のガイドラインによると「鍼灸はほとんど報告がなく有効かどうかは不明」とされている。今回の症例は肝の異常が疼痛に大きく関与していると判断し施術をおこなった。古典的な歯痛の治療では歯に属する経絡を中心に行われるが、非歯原性歯痛は関連痛や神経系の複雑な機序が関与するため、全体的なバランスを重視する鍼灸療法が有効である可能性が高い。非歯原性歯痛に対する鍼灸療法は試みる価値があると考えられる。

さらに詳しい情報やご相談はこちらからどうぞ。

好酸球性副鼻腔炎と鍼灸のすすめ

好酸球性副鼻腔炎(Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis, ECRS)は、鼻や副鼻腔の慢性炎症を特徴とする疾患です。特に好酸球という白血球の一種が増加し、鼻腔や副鼻腔の粘膜に炎症を引き起こします。この病気は、従来の副鼻腔炎とは異なり、難治性で再発しやすい特徴があります。

【好酸球性副鼻腔炎の主な特徴】

  1. 症状:
    • 鼻づまり
    • 臭いがしない(嗅覚障害)
    • 鼻汁(膿が混じる場合もある)
    • 顔面の痛みや圧迫感
    • 慢性的な頭痛
  2. 病因:
    • 原因は完全には解明されていませんが、アレルギー反応や免疫系の異常が関与していると考えられています。また、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などを併発しているケースが多いです。
  3. 診断:
    • 診断は、鼻内視鏡検査やCTスキャンで行われ、好酸球の増加を確認するために鼻汁や血液の検査が行われます。
  4. 治療:
    • 一般的には、ステロイドや抗ヒスタミン薬が用いられますが、症状が重い場合や再発を繰り返す場合には手術が検討されます。しかし、手術後も再発することが多いため、鍼灸などの補完療法も選択肢の一つとして注目されています。

【好酸球性副鼻腔炎の影響】

この疾患は、日常生活におけるQOL(生活の質)を大きく低下させることがあります。嗅覚の喪失や顔面の不快感が続くため、患者の心理的なストレスも増大します。したがって、早期の診断と治療が重要です。

【こんな方に鍼灸がおすすめ】

手術後に再発し、再手術はできるならしたくない。

鍼灸施術により症状が緩和され、臭いなども改善していきます。

ただし完全な回復は難しい、定期的な施術が必要、日常生活の改善が必要など一定条件がありますが、

今よりは快適に生活できるようになります。

下記は症例の報告です。

参考になさってください。

【症例概要】

46歳の女性、自営業を営んでいる患者様が、好酸球性副鼻腔炎を患い、当鍼灸院にご来院されました。主な訴えは「臭いがしない」というもので、投薬や手術を避け、臭覚の回復を目的としていました。

【病歴と治療経過】

この患者様は、令和4年10月に好酸球性副鼻腔炎と診断され、その後手術を受けましたが、再発を繰り返し、最終的に鍼灸療法に希望を託して当院を訪れました。治療では、脾虚(ひきょ)に焦点を当て、脾兪、腎兪、肝兪などの経穴を中心に施術を行いました。

治療を開始した後、ステロイドの使用頻度は顕著に減少し、臭覚の回復が見られる日も多くなりました。風邪を引いた際には一時的に臭いが感じられなくなりましたが、それ以外の期間では症状が約7割程度改善し、患者様のQOL(生活の質)も大いに向上しました。

【施術のポイント】

本症例では、古典的な鍼灸理論に基づき、鼻の不調は脾臓の機能低下と関連するとの説を参考にしました。鍼灸の施術により、全身のバランスを整え、自然治癒力を高めることで、薬物に頼らずに症状のコントロールが可能であることが示唆されました。

【結果と考察】

患者様は手術後の再発が続き、再手術も検討されていましたが、鍼灸療法により症状の緩和と再発の防止が図れました。この結果から、鍼灸療法が好酸球性副鼻腔炎の治療において有効である可能性が示されました。また、有害事象も認められず、安全性の高い治療法として評価できるでしょう。

【結語】

  1. 好酸球性副鼻腔炎の症例に対し、鍼灸療法を実施しました。
  2. 鼻は脾という伝統的な説に基づき、脾虚を中心に施術しました。
  3. 症状が改善し、QOLが向上しました。
  4. 鍼灸療法は、好酸球性副鼻腔炎の治療において試してみる価値のある療法と考えられます。

【鍼灸院にご来院される皆様へ】

もし、鼻や副鼻腔の問題でお悩みの方、特に好酸球性副鼻腔炎のように治療が難しいと言われている方には、当院の鍼灸療法をぜひ一度お試しいただきたいと思います。薬物療法や手術に頼ることなく、自然な方法で症状を緩和し、日常生活の質を向上させるお手伝いができるかもしれません。お気軽にご相談ください。

さらに詳しい情報は、こちらのリンクとよしま鍼灸院 (toyoshima-hari9.com)をご覧ください。

 耳管開放症の鍼灸

耳管開放症にお悩みの方へ、鍼灸療法が持つ自然なアプローチで、耳のバランスを回復しましょう。症状の根本原因にアプローチし、絶え間ない快適さを取り戻します。

〈耳管開放症〉

耳管開放症とは通常は閉じている耳管が何らかの原因で閉じなくなってしまった状態のため、

自分の声が強く響く

自分の呼吸音が聞こえる

耳が詰まった感じがする

耳鳴りやめまい

など様々な症状が出る症状です。上記のような症状➕姿勢によって症状が変化する、横になって寝ると楽になるなどの変化があればその可能性は高いと言われています。原因は明確になっていませんが、首や肩こりがある人に多いことや自律神経が乱れていると、耳管開放症になりやすいとも指摘されています。

〈鍼灸療法のアプローチ〉

鍼灸にできることは大きく分けて3つです。

①耳管の血流を改善させて収縮できるようにする。

②自律神経を調整することで耳管を正常化させる。

③心身の疲労状態、免疫力低下状態を正常化させることで収縮できるようにする。

〈セルフチェック〉
以下のような症状があれば鍼灸療法が適応する可能性があります。




首や肩がこっている


口が開けにくい

舌の周辺がギザギザになっている

鍼灸療法では主に三叉神経領域の経穴が良く用いられます。これは耳管を開孔する口蓋帆張筋の神経支配だからです。また同様に大後頭神経、舌咽神経の末梢の枝が分布している経穴に鍼灸をおこなうと効果があることも報告されています。具体的には『四白、大迎、頬車、天柱、白喉、内耳点』などに鍼灸をおこなうと良いようです。

自律神経の観点でいうと耳管の粘膜にある神経節は自律神経と深い関係があることが確認されています。抗コリン剤という副交感神経遮断するお薬で治癒したのも報告されていることからも自律神経が深く関与している疾患であると言うことがわかります。鍼灸では中耳粘膜の知覚を司る舌咽神経の抹消の枝に鍼刺激を行うこと、自律神経性の不均衡を是正することで耳管収縮を促し血流の改善を目指します。

次に全身状態からこの疾患を考えてみます。

〈心身共に疲れていませんか?〉

耳管開放症の患者さんは心身が疲れている人、強烈なストレスがある人、それが継続している人が多いと報告されています。これを受けて耳症状は心身症の一つであると指摘する研究者もいます。もう一度ご自身の状態を再確認してみてください。当院の患者さんを振り返ってもほとんどの人は発症時期に強烈なストレスがあった、もしくはそれが継続している人でした。ストレスにより自律神経も乱れ不眠、食欲減退、倦怠感などもありました。耳鼻科での治療に難渋している場合はこのようなタイプが多いと考えられます。ストレスによる疲労状態があれば耳局所の治療のみではなかなか改善してきません。

これはそこで鍼灸の抗ストレス作用を利用し全身状態を改善させることが治癒力の向上につながるのです。

耳管開放症による不快な症状から解放されませんか?鍼灸の知識と技術を駆使して、あなたの耳の健康をサポートします。

当院では耳管開放症以外の耳症状に対しても鍼灸施術をおこなっています

妊活で男性側がするべき最初のこと

妊活でご主人が最初にするべきこと。

そのヒントになるのが下記の報告です。

男性不妊と職業ストレスとの関係を調べた報告を紹介。

帝京大学附属病院 泌尿器科からです。

80症例が対象

精液所見とアンケート調査実施。

平均 36.5才

精液料 2.6ml

精子濃度 4224万/ml

運動率 53%

精子数5911万

これが平均値となります。

また約9割の人が仕事のストレスを多少なりとも感じているという結果。

週の労働時間が60時間を超えると、

精液量が優位に低下

精液濃度も低下傾向になる

睡眠時間が6時間未満で運動率は低下

仕事のストレスが高まるにつれて運動率は低下

WHOの精子基準をクリアしてればOKなのか?

WHOの精子基準はあくまでも妊娠可能な最低限の値を示していると言われています。

したがって基準値ギリギリを上回っている程度ではでは不可能ではないが、妊娠確率は低下することが予想されるということ。自然妊娠を望む場合、WHOの基準値は理論上不可能なことはないけれど、妊娠率を上げようとすると男性側も何か対策しないといけないということを示しています。検査で異常なしと言われた男性も数値を再度確認してみましょう。

同じぐらいの数値であればご主人も生活習慣の見直しを含めた妊活の対象になりますよ。

次に必要なこと

「検査上は問題ないのですが、何かしなくてはいけないことはありますか?」

「異常はないのですが主人も施術した方が良いですか?」などと聞かれるようになりました。妊活には男性側の協力が重要であるということが少しずつ浸透してきているようですね。

☆精液検査で特に問題ないと言われた方はまず何をしなくてはいけないのでしょうか?まずはタイミングの回数を多くしてください。臨床的妊娠確率が高いのは排卵前1日〜2日前。ただし5日前から排卵まで複数回タイミングを行うと妊娠率が高くなる。

タイミング数/妊娠率

  • 1回/26.4%
  • 2回/28.0%
  • 3回/37.5%
  • 4回/46.6%
  • 5回/33.3%
  • 6回/10.0%

婦人科で卵胞チェックを行なっている場合や検査薬、体温表などを用いてタイミングをとっているご夫婦に多いのですが、「2日前を狙って!」妊娠率は上記のようになっていますので、ご主人にできること、お願いすることは「まずはタイミングの回数を増やす」。その後に鍼灸かもしれませんね。

2023年5月30日 | Category : 男性不妊 | Author : 院長

突発性難聴・高音部の聴力が改善した症例

【主訴】突発性難聴

【発症】X年3月18日

【現病歴】3月18日に難聴とめまいが出現。3月25日に耳鼻科受診し突発性難聴と診断される。標準純音聴力検査(以下オージオグラム)の結果、高音部の難聴。

ステロイド内服などの標準治療開始。

2日後にもオージオグラム施行。

低音領域の聴力の低下も認めた。

3日後のオージオグラム

低音領域は改善も高音領域は不変とのことで、鍼灸施術との併用を希望され来院された。

【施術目標および計画】

①高音領域の聴力改善

②低音領域の維持

③めまい・耳鳴・耳閉塞感などの付随する症状の改善

1回/週の頻度の施術とする。ただし、聴力改善するまでは2回/週とする。

【施術】

当院の耳疾患標準施術

(頭部・頸部・肩部などへの施術および東洋医学的に脾・腎などの経穴への施術)

スーパーライザーによる星状神経節照射をおこなう。

【経過】

計3回の施術後のオージオグラムで4000Hzの聴力改善。

耳鳴・めまいなど付随する症状は残っているので引き続き施術を継続する予定。

【考察】比較的早期に聴力の改善を示した症例です。聴覚の有毛細胞は血管に近い方から低音領域→高音領域に配列されています。したがって血流の問題もありで高音領域は回復しにくい傾向にあります。耳鼻科医からも高音領域については回復は厳しい旨の説明がなされていました。しかし4月1日時のオージオグラムでは25dBまで改善し、ほぼ正常まで回復しました。また低音領域は正常値のまま安定傾向にあります。うまく回復した症例でした。

とよしま鍼灸院 施術料金

突発性難聴~1週間後から鍼灸を開始したケース~

突発性難聴~発症約2ヶ月後より施術を開始したケース~

メニエール病のめまいと鍼灸(症例)

メニエル病・難聴後に残った症状への鍼灸

メニエール病のめまいと鍼灸(症例)

なかなか治らないめまいや定期的に起こるめまい。

メニエール病と診断されている場合もあれば、診断名がつかないこともあります。

どこに行くにしても、何をするにしても、常にめまいのことを考慮しながらの生活になり大きなストレスとなります。

検査をおこなっても特に異常は無く、患者さん本人はもちろん主治医も困っているようなケースです。

めまい発作が発症している時は耳鼻科での治療が優先です。

しかし真の治療とはめまいの本当の原因を改善させて、発作を起こさないような体、状態にすることだと考えています。

そのめまいの原因にはいろいろとありますが、鍼灸がとても有効な場合があります。

それはめまいの原因が首や肩の凝りの場合です。

このタイプのめまいを『頚性めまい』といいます。

めまい診断のチャートを紹介します。

シリーズ教育講座「原著から今日まで ―代表的疾患の変遷―」

頚性めまい』田浦 晶子より

チャート内の頚部痛とありますが、臨床的には本人に自覚がないことや非常に軽微に感じていることも多いということが注意点です。

また内リンパ水腫が原因のめまいであれば利尿剤や漢方薬などがとても良く効くので耳鼻科医での治療で治癒していると思われます。

したがって標準治療をおこなってもなおめまいが頻発する場合は頸性めまいの可能性が高いです。

当院の鍼灸療法ではこの頚性めまいの原因である首や肩などの筋肉を緩めるような施術をファーストチョイスとしています。

僧帽筋

肩甲挙筋

後頭下筋群

側頭筋

胸鎖乳突筋

などを中心としてこりを探して筋肉を緩めていきます。

ただし筋肉の『こり』はあまり自覚がないことの方が多く、鍼灸師が探してみて初めてとても強い圧痛と共にその段階で初めてこりを自覚する方がほとんどです。

〈セルフチェック〉

以下のような症状があれば頸性めまいの可能性があります。

首が痛む

首や肩がこっている

エラが張っているように見える

口が開けにくい

舌の周辺がギザギザになっている

次に首や肩の筋肉が硬くなっているのかを探りそちらへの施術も同時に行います。

  • 頸椎症などによる筋緊張
  • パソコン作業での姿勢や眼の疲労
  • 顎関節症や食いしばり
  • 偏頭痛
  • ストレスによる交感神経緊張・自律神経の変調
  • 産後の疲労継続
  • 交通事故によるムチウチの既往
  • うつ病などによる頚部筋緊張

このように背景に何があるのかも重要なポイントです。
鍼灸院へ来院される頃はおそらく早くて1ヶ月、ほとんどはそれ以上経過しており、日常生活の質はかなり低下している場合がほとんどです。

〈鍼灸施術における注意点〉

筋緊張は緩和しても頚部からめまいを起こす神経の経路を正常化させるのには一定の期間施術が必要です。
そうすることで徐々に頻度や程度は改善し、消失していくことが多いようです。
また発作期と寛解期を繰り返す場合も多いので一定期間の経過観察および施術期間が必要です。これまで紹介してきたように頸性めまいに関してはかなり鍼灸療法は有効です。

いつどこでめまい発作が起きるかわからないと不安に過ごすよりも鍼灸療法ですっきりしてみませんか?

〈症例紹介〉ほんの一部を紹介します。

【症例1】50才 女性

【主訴】めまい

【現病歴】数年前より数ヶ月に1回の頻度で回転性のめまい発症約半年前から2〜3日に1回のい頻度で発症するようになった。特に起床直後に症状出現し、昼には寛解するという繰り返し。仕事も休職していいるが症状は変化ない各科の検査を行うも器質的な問題はない投薬治療のみで経過観察中

【既往歴】うつ病

【症状および所見】疲れやすい手足が冷える右肩から肩甲骨に疼痛あるも可動域制限はない頚肩部筋緊張圧痛著明→ほぼ全て側頭筋・咬筋も同様→食いしばり腹部臍傍抵抗圧痛著名→瘀血

【施術】頭部鍼通電天柱・風生・太渓・心兪・肝兪・脾兪ー置鍼適宜温灸も併用

【経過】

1回/週の頻度で施術3回目:今週1回めまい出現も程度軽い

4回目:1回だけ軽度めまい以降めまい消失その他の症状に対しての施術継続頚肩部の筋緊張は軽減するも残存。

瘀血や食いしばり傾向になるのが影響していると思われる。

めまいが消失してから頚肩部の凝り感や頭痛を自覚するようになった。

頚部筋からの刺激が前庭系に入力しなくなったものと思われる。
めまいが消失したのでジムでの運動も開始、徐々に体調が回復しているのを実感できているとのこと。
【症例】
65才 女性
【主訴】
めまい
1日中持続しているふわふわするような浮動感。
【現病歴】
約1ヶ月前に急性の胃腸炎発症。
胃腸炎の方は軽快するもその後からめまい感が出現。
苓桂朮甘湯(めまいの漢方薬)服用も変化なく当院へ。
【症状および所見】
首肩の凝り感が強い
胃腸の調子がすっきりしない
観察でも頚部全体の筋緊張が目立つ
肩甲挙筋の緊張圧痛がとても強い
胸鎖乳突筋にもトリガーポイントあり

【施術方針】頸性めまいと判断し頚部の筋緊張、特に肩甲挙筋の緊張緩和を目的とした。

【施術】

肩甲挙筋へ2本鍼施術、スーパーライザー併用

施術後筋緊張が緩和されたので終了。

計2回の施術でめまい症状消失し、予防的に3回目を施術して終了。

興味深いのは頸部の筋緊張が緩和しめまい感が消失したと同時に胃腸の調子もよくなったこと。

自律神経と頸部の関係性が理解しやすい症例でした。

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2023年2月18日 | Category : 耳鼻科領域 | Tag : めまい 治療 石川県めまい 鍼 石川県めまい鍼小松市 | Author : 院長 | Leave a commentEdit

メニエル病・難聴後に残った症状への鍼灸

メニエル病の蝸牛型や突発性難聴になった場合、聴力の回復如何の他に悩ませる症状が耳閉感・音響・耳鳴などの症状です。

時には聴力の低下よりもご本人にとってストレスとなることがあります。この諸症状は聴覚過敏の一つと言われ耳鼻科医での治療は限られています。

『あまり気にしないように』『慣れるしかない』と言われることからも分かります。

鍼灸療法では鍼通電刺激や末梢のツボ刺激、頚肩部を中心として筋緊張部位などへ鍼灸刺激などを行うことで聴覚過敏をいち早く正常化に導くことができます。

また当院ではスーパーライザーによる星状神経節照射を行うことで交感神経抑制、脳血流量の改善を目的に鍼灸療法と併用しています。

鍼灸刺激やスーパーライザーによる脳の変化、正常化は多くの基礎研究で明らかになっていますのでここでは取り上げません。

このような施術を行うことで数回〜2ヶ月程度(個人差、症状による)と自然経過との比較でも明らかに短期間で症状が消失しています。

一般的にこれらの症状は自然寛解するとも言われていますが、数ヶ月単位と長引く場合もありご本人にとっては非常に苦痛な期間を過ごすことになります。

長引くことにより睡眠障害などを引き起こし自律神経系の異常へと発展する場合もあります。

このような症状は鍼灸がとても良く効きますのでお悩みの方はご相談ください。

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妊活さんへの仙骨部表面電気刺激法

当院では妊活鍼灸に仙骨部表面電気刺激を併用しています。

仙骨部表面電気刺激法については下記に報告されています。

※仙骨部表面電気刺激による新しい神経調整的不妊治療法の研究

この報告では仙骨部に表面電気刺激を加えることで子宮の異常収縮が改善され、着床しやすくなる可能性を示唆しています。

過去の研究から子宮筋腫や子宮内膜症などがある人では子宮の異常収縮が認められることが知られており、不妊の原因の一つになっている可能性があることは指摘されています。

しかしこれまで異常収縮がある場合の治療法はありませんでした。

採卵状況は良好であるがなかなか着床しない方は着床障害が考えられますが、そのような方には特に有効な治療法の一つになる可能性があります。

またこの報告では表面の電気刺激でも効果が出ているようですが、表面の電気刺激よりも鍼灸刺激、および鍼通電刺激の方が効果は高いとされる研究が多いことから、この子宮収縮に関する刺激も鍼灸刺激(鍼通電刺激)の方が有効性は高いことが推測されます。

このことから胚移植時や排卵時期(タイミング時期)への鍼灸施術が妊娠率を上げる過去の報告は、このような陰部神経を介した子宮収縮の調整に働いていた要因もあるのかもしれません。

一方、妊娠成立には自律神経や免疫寛容などが作用する必要があることも知られており、鍼灸ではそれらにも刺激を行い調整することで妊娠率を上げることも知られています。

妊活分野において鍼灸が多く取り入れられているメカニズムが少しずつ明らかになってきているようですね。

したがって当院では仙骨部表面電気刺激と鍼灸刺激を併用し、より相乗効果を狙ってより効果を高めた刺激方法を行なっています。

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子宮の異常収縮が原因の不妊は鍼灸が有効

子宮の異常収縮が妊娠率を低下させる。

正常化は生殖医療(一般医療)では困難であるが鍼灸では容易である。

近年、胚移植時(着床時)に子宮の異常収縮(強い収縮)がある場合は妊娠率が低下し、低い収縮の場合は妊娠率は上がることが明らかになってきました。子宮側に問題がある着床障害の一つです。

特に子宮筋腫や子宮内膜症などが背景にある場合は、子宮の異常収縮を認めることがすでに報告されています。

したがってこの異常収縮を正常化させることができれば妊娠率は上がるということになります。

なんだ簡単なことですね?

と思われますが、実際にはそうではなく生殖医学を含めた通常の医学では難しいことなのです。

子宮の収縮は筋肉の収縮でもあります。通常の医療ではこの手の筋肉トラブルに対しては無力に近いのです。

考えてみてください。

肩こり(筋肉の持続的収縮状態)はどうですか?

全身の凝った状態はお薬で劇的に良くな流でしょうか?

残念ながら良くならないので鍼灸・あん摩・マッサージが今の時代でも残っているのです。

また仮に収縮を抑制するお薬を使ったとしましょう。

薬理上、全ての薬の効果は全身に影響します。

異常な収縮を起こしているところには有効かもしれませんが、その他の正常な部位に影響してしまうことも考慮入れる必要があります。

これらのことから通常の医療では非常に難しいのが現状なのです。

しかし鍼灸では容易です。

鍼灸の刺激により脊髄反射あるいは脳を介した反射により収縮している部位をピンポイントで調整することが可能であり、副作用もありません。

鍼灸で生理痛が減少するのもこの子宮収縮が適度な収縮に変わるからです。

異常収縮のみが原因であれば短期間で妊娠する確率が高い

多くの妊活さんは卵子の問題、子宮の収縮以外の問題が複数存在している方がほとんどです。

しかしなかには異常収縮のみが原因で長い期間授からない方も存在します。

このような方に鍼灸施術を行うと短期間・少ない回数で妊娠することが多いと実感しています。

前のお子さんは自然妊娠したものの2人目、3人目がなかなか授からない方などにもこのような方が見られます。

当然卵子の質が大きなウェイトを占めるのが妊活です。しかしその他の原因にも目を向けられると妊娠に近づくのではないでしょうか?

鍼灸の研究で移植前後に鍼灸施術をすると妊娠率が上がる論文があります。

またネットでも数回の施術で妊娠したと報告されているものも目にします。

これらは子宮の異常収縮が是正されたために妊娠した可能性が非常に高いです。

卵子の質の改善には一定の期間が必要になります。

子宮の異常収縮を是正し妊娠率を上乗せしながら卵子の質の改善を待つことがとても効率的なように思います。

これに着目し漢方薬を処方した報告

体外受精における胚移植時の芍薬甘草湯併用による妊娠率改善効果の検討

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/58/3/58_3_475/_pdf

仙骨表面電気刺激による新しい神経調整的不妊治療の研究

https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-20300192/20300192seika.pdf

これまでの鍼灸の基礎研究からは鍼灸刺激の方が効果は大きいことが明らかになっていることを最後に付け加えておきます。

とよしま鍼灸院サイト

とよしま鍼灸院 料金表

突発性難聴~1週間後から鍼灸を開始したケース~

突発性難聴を発症して約1週間後より鍼灸施術を開始できた症例を紹介します。

【症例】55才 女性

【主訴】突発性難聴

【初検日】X年8月16日

【現病歴】

X年8月10日 突然首や肩のこりが強くなるのに気づく。同時に左耳の詰まった感じと腫れぼったい感じを自覚

 8月11日 耳鼻科受診。突発性難聴と診断され入院し、ステロイドパルス療法含む標準治療を受ける。

16日 退院し転医。同日に鍼灸施術との併用を希望され来院された。

左:耳鼻科初診時と右:退院時の聴力

ほとんど変化がないことがわかります。

【施術および経過】

8月16日鍼灸初検

施術:左側頭部、左胸鎖乳突筋部、上背部の筋緊張部位へ置鍼、照海・腎兪へお灸(腎虚体質のため)

8月22日 耳閉感↓腫れぼったい感じ↓

8月29日 先週よりも耳閉感↓、腫れぼったい感じ↓、少し音が聞こえるような気がする

9月2日

9月2日の聴力

ほぼ発症前の聴力に回復し、耳閉感、腫れぼったい感じ、耳鳴、音響など全て消失。

治癒としました。

発症後から退院までの間で聴力が変化していない症例でしたので、どこまで聴力が戻るか不明でしたが回復しました。

9月2日の耳鼻科での診察時のこと、

検査技師『本当に患側である左側の耳に当てました?』

主治医『!???』

2人とも驚いた顔してましたよとのことでした。

みなさんこのように治癒するわけではありませんが、聴力が回復する可能性のある期間ゴールデンタイムは限られていますので、その期間を逃さないようにしましょう。

以下のような症状があれば特に鍼灸の適応です。

首が痛む

首や肩がこっている

エラが張っているように見える

口が開けにくい

舌の周辺がギザギザになっている

入院中のかたは退院後すぐに、通院のみの方はステロイド治療と併用可能です。

なるべく早期に施術を開始することが回復の大きなポイントです。

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