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院長コラム
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妊活さんへの仙骨部表面電気刺激法
当院では妊活鍼灸に仙骨部表面電気刺激を併用しています。
仙骨部表面電気刺激法については下記に報告されています。
この報告では仙骨部に表面電気刺激を加えることで子宮の異常収縮が改善され、着床しやすくなる可能性を示唆しています。
過去の研究から子宮筋腫や子宮内膜症などがある人では子宮の異常収縮が認められることが知られており、不妊の原因の一つになっている可能性があることは指摘されています。
しかしこれまで異常収縮がある場合の治療法はありませんでした。
採卵状況は良好であるがなかなか着床しない方は着床障害が考えられますが、そのような方には特に有効な治療法の一つになる可能性があります。
またこの報告では表面の電気刺激でも効果が出ているようですが、表面の電気刺激よりも鍼灸刺激、および鍼通電刺激の方が効果は高いとされる研究が多いことから、この子宮収縮に関する刺激も鍼灸刺激(鍼通電刺激)の方が有効性は高いことが推測されます。
このことから胚移植時や排卵時期(タイミング時期)への鍼灸施術が妊娠率を上げる過去の報告は、このような陰部神経を介した子宮収縮の調整に働いていた要因もあるのかもしれません。
一方、妊娠成立には自律神経や免疫寛容などが作用する必要があることも知られており、鍼灸ではそれらにも刺激を行い調整することで妊娠率を上げることも知られています。
妊活分野において鍼灸が多く取り入れられているメカニズムが少しずつ明らかになってきているようですね。
したがって当院では仙骨部表面電気刺激と鍼灸刺激を併用し、より相乗効果を狙ってより効果を高めた刺激方法を行なっています。
子宮の異常収縮が原因の不妊は鍼灸が有効
子宮の異常収縮が妊娠率を低下させる。
正常化は生殖医療(一般医療)では困難であるが鍼灸では容易である。
近年、胚移植時(着床時)に子宮の異常収縮(強い収縮)がある場合は妊娠率が低下し、低い収縮の場合は妊娠率は上がることが明らかになってきました。子宮側に問題がある着床障害の一つです。
特に子宮筋腫や子宮内膜症などが背景にある場合は、子宮の異常収縮を認めることがすでに報告されています。
したがってこの異常収縮を正常化させることができれば妊娠率は上がるということになります。
なんだ簡単なことですね?
と思われますが、実際にはそうではなく生殖医学を含めた通常の医学では難しいことなのです。
子宮の収縮は筋肉の収縮でもあります。通常の医療ではこの手の筋肉トラブルに対しては無力に近いのです。
考えてみてください。
肩こり(筋肉の持続的収縮状態)はどうですか?
全身の凝った状態はお薬で劇的に良くな流でしょうか?
残念ながら良くならないので鍼灸・あん摩・マッサージが今の時代でも残っているのです。
また仮に収縮を抑制するお薬を使ったとしましょう。
薬理上、全ての薬の効果は全身に影響します。
異常な収縮を起こしているところには有効かもしれませんが、その他の正常な部位に影響してしまうことも考慮入れる必要があります。
これらのことから通常の医療では非常に難しいのが現状なのです。
しかし鍼灸では容易です。
鍼灸の刺激により脊髄反射あるいは脳を介した反射により収縮している部位をピンポイントで調整することが可能であり、副作用もありません。
鍼灸で生理痛が減少するのもこの子宮収縮が適度な収縮に変わるからです。
異常収縮のみが原因であれば短期間で妊娠する確率が高い
多くの妊活さんは卵子の問題、子宮の収縮以外の問題が複数存在している方がほとんどです。
しかしなかには異常収縮のみが原因で長い期間授からない方も存在します。
このような方に鍼灸施術を行うと短期間・少ない回数で妊娠することが多いと実感しています。
前のお子さんは自然妊娠したものの2人目、3人目がなかなか授からない方などにもこのような方が見られます。
当然卵子の質が大きなウェイトを占めるのが妊活です。しかしその他の原因にも目を向けられると妊娠に近づくのではないでしょうか?
鍼灸の研究で移植前後に鍼灸施術をすると妊娠率が上がる論文があります。
またネットでも数回の施術で妊娠したと報告されているものも目にします。
これらは子宮の異常収縮が是正されたために妊娠した可能性が非常に高いです。
卵子の質の改善には一定の期間が必要になります。
子宮の異常収縮を是正し妊娠率を上乗せしながら卵子の質の改善を待つことがとても効率的なように思います。
これに着目し漢方薬を処方した報告
体外受精における胚移植時の芍薬甘草湯併用による妊娠率改善効果の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/58/3/58_3_475/_pdf
仙骨表面電気刺激による新しい神経調整的不妊治療の研究
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-20300192/20300192seika.pdf
これまでの鍼灸の基礎研究からは鍼灸刺激の方が効果は大きいことが明らかになっていることを最後に付け加えておきます。
突発性難聴~1週間後から鍼灸を開始したケース~
突発性難聴を発症して約1週間後より鍼灸施術を開始できた症例を紹介します。
【症例】55才 女性
【主訴】突発性難聴
【初検日】X年8月16日
【現病歴】
X年8月10日 突然首や肩のこりが強くなるのに気づく。同時に左耳の詰まった感じと腫れぼったい感じを自覚
8月11日 耳鼻科受診。突発性難聴と診断され入院し、ステロイドパルス療法含む標準治療を受ける。
16日 退院し転医。同日に鍼灸施術との併用を希望され来院された。
左:耳鼻科初診時と右:退院時の聴力
ほとんど変化がないことがわかります。
【施術および経過】
8月16日鍼灸初検
施術:左側頭部、左胸鎖乳突筋部、上背部の筋緊張部位へ置鍼、照海・腎兪へお灸(腎虚体質のため)
8月22日 耳閉感↓腫れぼったい感じ↓
8月29日 先週よりも耳閉感↓、腫れぼったい感じ↓、少し音が聞こえるような気がする
9月2日
9月2日の聴力
ほぼ発症前の聴力に回復し、耳閉感、腫れぼったい感じ、耳鳴、音響など全て消失。
治癒としました。
発症後から退院までの間で聴力が変化していない症例でしたので、どこまで聴力が戻るか不明でしたが回復しました。
9月2日の耳鼻科での診察時のこと、
検査技師『本当に患側である左側の耳に当てました?』
主治医『!???』
2人とも驚いた顔してましたよとのことでした。
みなさんこのように治癒するわけではありませんが、聴力が回復する可能性のある期間ゴールデンタイムは限られていますので、その期間を逃さないようにしましょう。
以下のような症状があれば特に鍼灸の適応です。
首が痛む
首や肩がこっている
エラが張っているように見える
口が開けにくい
舌の周辺がギザギザになっている
入院中のかたは退院後すぐに、通院のみの方はステロイド治療と併用可能です。
なるべく早期に施術を開始することが回復の大きなポイントです。
耳鳴のメカニズムと鍼灸
耳鳴とは外部からの音刺激がないのに 耳に音を感じることと定義されています。
成人の15%がなんらかの耳鳴を経験し、そのうち20%が生活に支障をきたすほどの耳鳴で悩まされているとされています。人数にすると約300万人になります。
耳鳴には自覚耳鳴と他覚的耳鳴に分類されますがほとんどは自覚的耳鳴です。
他覚的耳鳴には血管音やアブミ骨筋などが原因のことが多いとされています。
そこでここでは一般的な自覚的耳鳴にしぼって紹介します。
【耳鳴の原因】
鼓膜~中耳~内耳~聴覚神経~大脳聴覚野のどの部分にトラブルが起きてもおこりますが中耳炎や鼓膜のトラブルなど原因が明確な場合を除くと、耳鳴の原因は以下の図のようなメカニズムで発症するといわれています。
高音部(黄色)のメモリが低下しています。これは高音部の聴力が低下していることを表した写真です。
これまで聞こえていた聴力が低下したので、大脳の聴覚野が感度を上げようとして興奮した結果、通常では拾うことのなかった電気信号まで拾うようになり、それが耳鳴音として聞こえてしまうというのがメカニズムです。
したがって耳鳴は耳が鳴っているのではなく、脳が鳴っていると理解しましょう。
さて、耳鳴で悩んでいる人以外耳鳴は感じないのでしょうか?
実は耳鳴は静かな無音の環境下ではほとんどの人が耳鳴を感じています。
問題はそれが常に意識してしまうのか?それが不快に感じてしまうか?なのです。
耳鳴で苦しんでいる人は
- 大脳辺縁系の海馬で不快な経験として記憶される
- ⇒扁桃体では不快感や恐怖として認識
- ⇒扁桃体は視床下部を通じて自律神経に「退避行動」を取るように命令
- ⇒退避行動は、心拍数の増加、血圧の上昇など、危険に対して身構えているようなもの
- ⇒緊張を強いられた状態
- ⇒自律神経の緊張状態は、大脳皮質を刺激
- ⇒大脳辺縁系へ不快なストレスを伴った信号が巡り巡っていくという悪循環を来たす。
このように耳が問題なのではなく、脳が複雑に関与しているのが耳鳴なのです。
まずは専門医で以下のような疾患がないか診察を受けてください。
- メニエール病
・突発性難聴
・老人性難聴
・ラムゼイ・ハント病
・薬剤性内耳障害
・自律神経失調症
・外耳道炎
・耳硬化症、中耳炎、鼓膜炎
・耳管機能不全、耳管炎
・聴神経腫瘍、聴神経炎
・脳の外傷、脳腫瘍、脳出血、脳幹梗塞上記の疾患がない場合、西洋医学的治療は限られていますので、鍼灸治療が有効かもしれません。
鍼灸治療では下記のような効果が期待できます。
内耳の血液循環改善
聴神経の血流改善
大脳辺縁系や大脳皮質の異常興奮の鎮静化
自律神経の調整
などを目的に行います。
また耳鳴の発症原因が、
突発性難聴やメニエール病の蝸牛型などによる聴力の低下なのか?
うつ・自律神経の異常によるものなのか?
高齢による聴力低下なのか?
風邪や中耳炎による一過性のものなのか?
などを鑑別し、それぞれに対応していきます。
耳鼻科での治療については限られており、『気のせいなので慣れるしかない』と放置されてしまうことが多いようです。
上記のような作用機序で鍼灸療法は耳鳴に対しては有効な手段となります。
突発性難聴の発症約2ヶ月後より施術を開始
【要旨】
突発性難聴発症
約1ヶ月半後に耳鼻科受診→標準治療開始
※ゴールデンタイムを逃す
聴力変化なし
約2ヶ月後より鍼灸施術開始
※聴力固定の可能性大
ただし低音領域のみであるため改善の可能性も僅かにあり
【症例】
56才 女性
【主訴】突発性難聴
【初検】8月8日
【現病歴】
6月上旬に左耳の聞こえずらさを自覚。耳閉感・耳鳴り・音響
7月22日 耳鼻科受診
低音部の聴力低下が認められます。
ステロイド1週間、その後ビタミン剤という標準治療→経過観察
聴力の改善が見られないため8月8日鍼灸施術を希望され来院。
1回/週の頻度で鍼灸施術を開始。
8月18日
鍼灸施術は2回済み
あまり変化はないようですね。
この受診時の主治医コメント
『おそらくこれ以上は良くならないと思います』とのこと。
鍼灸開始して間がないこともあり、もう3週間ビタミン剤の処方と鍼灸施術を併用してみることに。
当院の方針も3週間後に聴力の変化を認めないようなら聴力固定とし、付随する症状(耳閉塞感・耳鳴等)への施術に変更することとしました。
9月8日
耳鼻科医コメント
『聴力が改善傾向にあるので、もう3週間処方を継続』とのこと。
250Hzと500Hzで約15d B改善しています。
僅か15dBのようにも思えますが、60dB代と40dB代とでは聞きずらさはかなり違ってきます。
これからどこまで改善するかはまだわかりませんが、聴力が動いている間は鍼灸施術を継続すると良いでしょう。
ゴールデンタイムを逃した症例だったが鍼灸施術を開始してから改善
- 聴力低下が高音部に比較して血流の豊富な低音部領域だったこと
- 当院の鍼灸施術が的確であったこと
- 瘀血の証であったことで血流改善による聴力回復が可能であったこと
- スーパーライザーによる星状神経節照射を的確に行ったこと
などが要因と考えます。
全ての人が治癒、改善するということは残念ながらありません。
しかし鍼灸施術によりその可能性が高まれば・・・
今より少しでも聴力が改善すれば・・・
聴力が固定してしまう前に一度鍼灸療法を試してみたらいかがでしょうか?