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院長コラム
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メニエール病のめまいと鍼灸(症例)
なかなか治らないめまいや定期的に起こるめまい。
メニエール病と診断されている場合もあれば、診断名がつかないこともあります。
どこに行くにしても、何をするにしても、常にめまいのことを考慮しながらの生活になり大きなストレスとなります。
検査をおこなっても特に異常は無く、患者さん本人はもちろん主治医も困っているようなケースです。
めまい発作が発症している時は耳鼻科での治療が優先です。
しかし真の治療とはめまいの本当の原因を改善させて、発作を起こさないような体、状態にすることだと考えています。
そのめまいの原因にはいろいろとありますが、鍼灸がとても有効な場合があります。
それはめまいの原因が首や肩の凝りの場合です。
このタイプのめまいを『頚性めまい』といいます。
めまい診断のチャートを紹介します。
シリーズ教育講座「原著から今日まで ―代表的疾患の変遷―」
チャート内の頚部痛とありますが、臨床的には本人に自覚がないことや非常に軽微に感じていることも多いということが注意点です。
また内リンパ水腫が原因のめまいであれば利尿剤や漢方薬などがとても良く効くので耳鼻科医での治療で治癒していると思われます。
したがって標準治療をおこなってもなおめまいが頻発する場合は頸性めまいの可能性が高いです。
当院の鍼灸療法ではこの頚性めまいの原因である首や肩などの筋肉を緩めるような施術をファーストチョイスとしています。
僧帽筋
肩甲挙筋
後頭下筋群
側頭筋
胸鎖乳突筋
などを中心としてこりを探して筋肉を緩めていきます。
ただし筋肉の『こり』はあまり自覚がないことの方が多く、鍼灸師が探してみて初めてとても強い圧痛と共にその段階で初めてこりを自覚する方がほとんどです。
〈セルフチェック〉
以下のような症状があれば頸性めまいの可能性があります。
首が痛む
首や肩がこっている
エラが張っているように見える
口が開けにくい
舌の周辺がギザギザになっている
次に首や肩の筋肉が硬くなっているのかを探りそちらへの施術も同時に行います。
- 頸椎症などによる筋緊張
- パソコン作業での姿勢や眼の疲労
- 顎関節症や食いしばり
- 偏頭痛
- ストレスによる交感神経緊張・自律神経の変調
- 産後の疲労継続
- 交通事故によるムチウチの既往
- うつ病などによる頚部筋緊張
このように背景に何があるのかも重要なポイントです。
鍼灸院へ来院される頃はおそらく早くて1ヶ月、ほとんどはそれ以上経過しており、日常生活の質はかなり低下している場合がほとんどです。〈鍼灸施術における注意点〉
筋緊張は緩和しても頚部からめまいを起こす神経の経路を正常化させるのには一定の期間施術が必要です。
そうすることで徐々に頻度や程度は改善し、消失していくことが多いようです。
また発作期と寛解期を繰り返す場合も多いので一定期間の経過観察および施術期間が必要です。これまで紹介してきたように頸性めまいに関してはかなり鍼灸療法は有効です。いつどこでめまい発作が起きるかわからないと不安に過ごすよりも鍼灸療法ですっきりしてみませんか?
〈症例紹介〉ほんの一部を紹介します。
【症例1】50才 女性
【主訴】めまい
【現病歴】数年前より数ヶ月に1回の頻度で回転性のめまい発症約半年前から2〜3日に1回のい頻度で発症するようになった。特に起床直後に症状出現し、昼には寛解するという繰り返し。仕事も休職していいるが症状は変化ない各科の検査を行うも器質的な問題はない投薬治療のみで経過観察中
【既往歴】うつ病
【症状および所見】疲れやすい手足が冷える右肩から肩甲骨に疼痛あるも可動域制限はない頚肩部筋緊張圧痛著明→ほぼ全て側頭筋・咬筋も同様→食いしばり腹部臍傍抵抗圧痛著名→瘀血
【施術】頭部鍼通電天柱・風生・太渓・心兪・肝兪・脾兪ー置鍼適宜温灸も併用
【経過】
1回/週の頻度で施術3回目:今週1回めまい出現も程度軽い
4回目:1回だけ軽度めまい以降めまい消失その他の症状に対しての施術継続頚肩部の筋緊張は軽減するも残存。
瘀血や食いしばり傾向になるのが影響していると思われる。
めまいが消失してから頚肩部の凝り感や頭痛を自覚するようになった。
頚部筋からの刺激が前庭系に入力しなくなったものと思われる。
めまいが消失したのでジムでの運動も開始、徐々に体調が回復しているのを実感できているとのこと。
【症例】
65才 女性
【主訴】
めまい
1日中持続しているふわふわするような浮動感。
【現病歴】
約1ヶ月前に急性の胃腸炎発症。
胃腸炎の方は軽快するもその後からめまい感が出現。
苓桂朮甘湯(めまいの漢方薬)服用も変化なく当院へ。
【症状および所見】
首肩の凝り感が強い
胃腸の調子がすっきりしない
観察でも頚部全体の筋緊張が目立つ
肩甲挙筋の緊張圧痛がとても強い
胸鎖乳突筋にもトリガーポイントあり【施術方針】頸性めまいと判断し頚部の筋緊張、特に肩甲挙筋の緊張緩和を目的とした。
【施術】
肩甲挙筋へ2本鍼施術、スーパーライザー併用
施術後筋緊張が緩和されたので終了。
計2回の施術でめまい症状消失し、予防的に3回目を施術して終了。
興味深いのは頸部の筋緊張が緩和しめまい感が消失したと同時に胃腸の調子もよくなったこと。
自律神経と頸部の関係性が理解しやすい症例でした。
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2023年2月18日 | Category : 耳鼻科領域 | Tag : めまい 治療 石川県, めまい 鍼 石川県, めまい鍼小松市 | Author : 院長 | Leave a commentEdit
メニエル病・難聴後に残った症状への鍼灸
メニエル病の蝸牛型や突発性難聴になった場合、聴力の回復如何の他に悩ませる症状が耳閉感・音響・耳鳴などの症状です。
時には聴力の低下よりもご本人にとってストレスとなることがあります。この諸症状は聴覚過敏の一つと言われ耳鼻科医での治療は限られています。
『あまり気にしないように』『慣れるしかない』と言われることからも分かります。
鍼灸療法では鍼通電刺激や末梢のツボ刺激、頚肩部を中心として筋緊張部位などへ鍼灸刺激などを行うことで聴覚過敏をいち早く正常化に導くことができます。
また当院ではスーパーライザーによる星状神経節照射を行うことで交感神経抑制、脳血流量の改善を目的に鍼灸療法と併用しています。
鍼灸刺激やスーパーライザーによる脳の変化、正常化は多くの基礎研究で明らかになっていますのでここでは取り上げません。
このような施術を行うことで数回〜2ヶ月程度(個人差、症状による)と自然経過との比較でも明らかに短期間で症状が消失しています。
一般的にこれらの症状は自然寛解するとも言われていますが、数ヶ月単位と長引く場合もありご本人にとっては非常に苦痛な期間を過ごすことになります。
長引くことにより睡眠障害などを引き起こし自律神経系の異常へと発展する場合もあります。
このような症状は鍼灸がとても良く効きますのでお悩みの方はご相談ください。
妊活さんへの仙骨部表面電気刺激法
当院では妊活鍼灸に仙骨部表面電気刺激を併用しています。
仙骨部表面電気刺激法については下記に報告されています。
この報告では仙骨部に表面電気刺激を加えることで子宮の異常収縮が改善され、着床しやすくなる可能性を示唆しています。
過去の研究から子宮筋腫や子宮内膜症などがある人では子宮の異常収縮が認められることが知られており、不妊の原因の一つになっている可能性があることは指摘されています。
しかしこれまで異常収縮がある場合の治療法はありませんでした。
採卵状況は良好であるがなかなか着床しない方は着床障害が考えられますが、そのような方には特に有効な治療法の一つになる可能性があります。
またこの報告では表面の電気刺激でも効果が出ているようですが、表面の電気刺激よりも鍼灸刺激、および鍼通電刺激の方が効果は高いとされる研究が多いことから、この子宮収縮に関する刺激も鍼灸刺激(鍼通電刺激)の方が有効性は高いことが推測されます。
このことから胚移植時や排卵時期(タイミング時期)への鍼灸施術が妊娠率を上げる過去の報告は、このような陰部神経を介した子宮収縮の調整に働いていた要因もあるのかもしれません。
一方、妊娠成立には自律神経や免疫寛容などが作用する必要があることも知られており、鍼灸ではそれらにも刺激を行い調整することで妊娠率を上げることも知られています。
妊活分野において鍼灸が多く取り入れられているメカニズムが少しずつ明らかになってきているようですね。
したがって当院では仙骨部表面電気刺激と鍼灸刺激を併用し、より相乗効果を狙ってより効果を高めた刺激方法を行なっています。
子宮の異常収縮が原因の不妊は鍼灸が有効
子宮の異常収縮が妊娠率を低下させる。
正常化は生殖医療(一般医療)では困難であるが鍼灸では容易である。
近年、胚移植時(着床時)に子宮の異常収縮(強い収縮)がある場合は妊娠率が低下し、低い収縮の場合は妊娠率は上がることが明らかになってきました。子宮側に問題がある着床障害の一つです。
特に子宮筋腫や子宮内膜症などが背景にある場合は、子宮の異常収縮を認めることがすでに報告されています。
したがってこの異常収縮を正常化させることができれば妊娠率は上がるということになります。
なんだ簡単なことですね?
と思われますが、実際にはそうではなく生殖医学を含めた通常の医学では難しいことなのです。
子宮の収縮は筋肉の収縮でもあります。通常の医療ではこの手の筋肉トラブルに対しては無力に近いのです。
考えてみてください。
肩こり(筋肉の持続的収縮状態)はどうですか?
全身の凝った状態はお薬で劇的に良くな流でしょうか?
残念ながら良くならないので鍼灸・あん摩・マッサージが今の時代でも残っているのです。
また仮に収縮を抑制するお薬を使ったとしましょう。
薬理上、全ての薬の効果は全身に影響します。
異常な収縮を起こしているところには有効かもしれませんが、その他の正常な部位に影響してしまうことも考慮入れる必要があります。
これらのことから通常の医療では非常に難しいのが現状なのです。
しかし鍼灸では容易です。
鍼灸の刺激により脊髄反射あるいは脳を介した反射により収縮している部位をピンポイントで調整することが可能であり、副作用もありません。
鍼灸で生理痛が減少するのもこの子宮収縮が適度な収縮に変わるからです。
異常収縮のみが原因であれば短期間で妊娠する確率が高い
多くの妊活さんは卵子の問題、子宮の収縮以外の問題が複数存在している方がほとんどです。
しかしなかには異常収縮のみが原因で長い期間授からない方も存在します。
このような方に鍼灸施術を行うと短期間・少ない回数で妊娠することが多いと実感しています。
前のお子さんは自然妊娠したものの2人目、3人目がなかなか授からない方などにもこのような方が見られます。
当然卵子の質が大きなウェイトを占めるのが妊活です。しかしその他の原因にも目を向けられると妊娠に近づくのではないでしょうか?
鍼灸の研究で移植前後に鍼灸施術をすると妊娠率が上がる論文があります。
またネットでも数回の施術で妊娠したと報告されているものも目にします。
これらは子宮の異常収縮が是正されたために妊娠した可能性が非常に高いです。
卵子の質の改善には一定の期間が必要になります。
子宮の異常収縮を是正し妊娠率を上乗せしながら卵子の質の改善を待つことがとても効率的なように思います。
これに着目し漢方薬を処方した報告
体外受精における胚移植時の芍薬甘草湯併用による妊娠率改善効果の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/58/3/58_3_475/_pdf
仙骨表面電気刺激による新しい神経調整的不妊治療の研究
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-20300192/20300192seika.pdf
これまでの鍼灸の基礎研究からは鍼灸刺激の方が効果は大きいことが明らかになっていることを最後に付け加えておきます。
突発性難聴~1週間後から鍼灸を開始したケース~
突発性難聴を発症して約1週間後より鍼灸施術を開始できた症例を紹介します。
【症例】55才 女性
【主訴】突発性難聴
【初検日】X年8月16日
【現病歴】
X年8月10日 突然首や肩のこりが強くなるのに気づく。同時に左耳の詰まった感じと腫れぼったい感じを自覚
8月11日 耳鼻科受診。突発性難聴と診断され入院し、ステロイドパルス療法含む標準治療を受ける。
16日 退院し転医。同日に鍼灸施術との併用を希望され来院された。
左:耳鼻科初診時と右:退院時の聴力
ほとんど変化がないことがわかります。
【施術および経過】
8月16日鍼灸初検
施術:左側頭部、左胸鎖乳突筋部、上背部の筋緊張部位へ置鍼、照海・腎兪へお灸(腎虚体質のため)
8月22日 耳閉感↓腫れぼったい感じ↓
8月29日 先週よりも耳閉感↓、腫れぼったい感じ↓、少し音が聞こえるような気がする
9月2日
9月2日の聴力
ほぼ発症前の聴力に回復し、耳閉感、腫れぼったい感じ、耳鳴、音響など全て消失。
治癒としました。
発症後から退院までの間で聴力が変化していない症例でしたので、どこまで聴力が戻るか不明でしたが回復しました。
9月2日の耳鼻科での診察時のこと、
検査技師『本当に患側である左側の耳に当てました?』
主治医『!???』
2人とも驚いた顔してましたよとのことでした。
みなさんこのように治癒するわけではありませんが、聴力が回復する可能性のある期間ゴールデンタイムは限られていますので、その期間を逃さないようにしましょう。
以下のような症状があれば特に鍼灸の適応です。
首が痛む
首や肩がこっている
エラが張っているように見える
口が開けにくい
舌の周辺がギザギザになっている
入院中のかたは退院後すぐに、通院のみの方はステロイド治療と併用可能です。
なるべく早期に施術を開始することが回復の大きなポイントです。