院長コラム

サイト管理人のブログです。

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妊娠と抗ストレス作用

妊活施術を行う前の初回の面接時に必ず説明することを少しずつ書いていこうと思います。

今日は

『なぜ妊活に鍼灸が良いのでしょうか?』

です。

鍼灸のメカニズムから考えるとたくさんあります。

その中でも一番は

『鍼灸には抗ストレス作用がある』ということ。

もれなく妊活さんは『妊活』を始めた瞬間からストレスとの共存生活が始まります。

これがステップアップするにつれてまた妊活期間が長くなるにつれてストレスの度合いが強くなります。

妊活にストレスはマイナスということを野生動物を例にして紹介します。※人間も動物なので基本的には同じと思ってください。

野生動物がストレスを感じる時は敵が目の前にいること、すなわち生死がかかった状態です。

この時、動物は敵から逃げるか闘うかの2択になります。

したがって血液の流れを含む生体の機能は骨格筋が優先され内臓への働きは抑制されます。

逃げるためには早い足が必要、

闘うためには強力な力が必要。

内臓の動きなんかは二の次ですよね。

言い換えると妊娠なんて二の次の状態。

妊活中はこの状態がずっと続いていることとも言えます。

『たまにはリラックスして〜』とか

『ストレスためないように〜』とかアドバイスされるように、

ご本人や周囲の人たちも含め、みなさんストレスが一番悪いとわかっているんですよね。

しかし妊娠するか妊活をやめるか以外はストレスは無くなりません。

これが高度生殖医学の中で見落とされているところであり、対処できていないところでもあります。

そこで鍼灸療法の出番です。

鍼灸療法の効果の一つに『抗ストレス効果』があることが各種の指標で証明されています。

したがって頭はストレスいっぱいには変わりませんが、体はストレスフリーの状態にしてあげることができる。

その状態をキープすることで良質の卵と子宮内膜が得られ、結果として妊娠率の上乗せができる可能性があるというのが妊活鍼灸を受ける大きなメリットの一つなのです。

鍼灸療法の抗ストレス作用。

論文も本当にたくさんありますので、ここでは紹介しません。

『鍼灸 抗ストレス』なんかでググってみてください。

本日も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

スーパーライザーによる妊活施術

当院では鍼を用いず、スーパーライザーと温灸のみで行う妊活施術外来を開始しました。

スーパーライザーとは

直線偏光近赤外線治療器といい身体の深部まで光を到達させることのできる治療器のことです。

通常の赤外線治療器は皮膚でほぼシャットアウトされるので、深部の筋肉はもちろん神経や血管、動脈・静脈・リンパなどに直接刺激することはできませんでした。

しかしスーパーライザーは体表から数センチまで光線が届きますので直接的な刺激が可能となる治療機器です。

すでに多くの生殖クリニックで取り入れられている治療器で、不妊治療の現場では注目されていました。

一般的な赤外線治療器は皮膚や筋肉までしか光が届かないのですが、スーパーライザーは筋肉よりさらに深部にある自律神経や動脈、静脈、リンパなどへのアプローチが可能となる最新の光線治療器です。

上記の特性とこれまで当院が妊活鍼灸で得た治験を融合させてより効果的な施術を目指すこととしました。

スーパーライザー

実際に低出力レーザー(LTTT)療法による有効性が既に報告されております。

この低出力レーザーよりもスーパーライザーの方が体表からの深達度が大きいためより有効性は大きいと思われます。

スーパーライザーによる具体的な施術について

星状神経節照射による交感神経ブロック

星状神経節照射による交感神経ブロックにより副交感神経優位にさせてホルモン異常や血流改善を目指します。

ほぼ全ての妊活治療中の方はストレス状態となっています。タイミングレベルの方からすでにストレスとの共存生活がスタートし、ステップアップするにつれてストレス状態は大きくなります。これを自律神経の観点から言うと交感神経優位といいます。

ちなみにこの反対であるリラックス状態(ストレスフリー)は副交感神経優位といいます。妊活そのものを止めて2人の生活を選択した、とたんに妊娠したというのはまさにストレスフリーの状態が妊娠に作用した典型例なのです。

このストレス状態である交感神経優位状態は内臓の血管を収縮させ、結果として卵巣動脈や子宮動脈の血流悪化を招き、良質の卵子・子宮内膜の形成に悪影響を及ぼします。

また自律神経とホルモンはセットとして考えることがセオリーなので自律神経が乱れていれば必ずホルモンも乱れてくるのが常なのです。

そこでこの交感神経をブロックすることで強制的に副交感神経を優位にし、内臓血管の血流を改善、ホルモンを正常化させることで卵子子宮内膜に好影響を及ぼすことが可能になります。

スーパーライザーによるツボ照射

従来より妊活施術で用いていたツボにスーパーライザー照射することでし鍼を施術した時と似たような効果を目指します。

いわゆるツボと呼ばれる部位には神経終末が密になっていることや、その筋膜上にはポリモーダル受容器が存在するので、温熱刺激にも反応する部位ともいえます。そこで卵巣や子宮の血流などに関与するツボに照射することで血流改善効果が期待できます。

温灸による施術

痕が残らないようなタイプのお灸も併用して施術します。

東洋医学的アプローチを行うときに用います。

東洋医学的分類

不妊の状態を「気虚・気滞・瘀血・血虚・水毒」というカテゴリーに分類し、施術をおこなうことで妊娠しやすい体に変えようとするものです。

そのアプローチには温灸を使いツボを刺激していきます。

スーパーライザーと温灸による施術の効果については鍼灸施術併用に比べて若干落ちますが、鍼を刺されることがどうしても嫌な方などはこちらの方で施術を受けられてはいかがでしょうか?

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片頭痛には鍼灸がおすすめ

日本で片頭痛に悩んでいる方は人口のは8%といわれ、QOL(生活の質)を著しく低下させます。

一般的な治療法としてはトリプタン製剤が有用ですが、あまり効果がない場合や投薬過多により薬物乱用性頭痛の存在も指摘されています。トリプタン製剤で反応しにくい人に対しての新薬もまた研究されるでしょう。しかしまたそれも効果がない人も必ず出てくるでしょう。

本記事ではトリプタン製剤などの投薬治療に反応しにくい(効果がない)人や投薬でコントロールできている人でも投薬の回数を減らしたい、最近頭痛発作の頻度が短くなってきた、などの人に対して紹介するものです。

なぜ片頭痛が鍼灸で良くなるのでしょうか?

片頭痛は必ず最初にあるスイッチがONになることにより発作が始ます。

このスイッチは誘発因子によって起こることは知られています。

チョコレートやチーズ、アルコールなどの食品、月経、ストレス、睡眠不足・過剰など人それぞれあると思います。

その誘発因子プラス背景因子としてこれまで見逃されていたポイントが今回紹介する目的です。

片頭痛を楽にしたければ肩こりを解消しよう!

首や肩の筋肉のコリを処理して、柔らかくしておくと片頭痛のスイッチがONに入りずらくなります。結果として片頭痛の頻度や程度は軽減することが明らかになっています。

専門的なメカニズムは記事の最後に論文を紹介してありますので詳細を知りたい方はそちらの方へどうぞ。

普段から首・肩こりの自覚がある場合や自覚はないが、美容院などで触ってもらうと硬い!と指摘されている場合も同様です。

特に特徴的な症状を紹介します。

鍼灸療法が特に有効な人の特徴

  • 日頃から首・肩が凝っている人(自覚はないが美容院なので硬いと言われたことがある人)
  • 朝、起床直後より首やかたが硬いと感じる人
  • 顎が疲れて口が開きづらい人
  • 自身の舌の周囲がギザギザになっている人
  • パソコンを見ていて疲れ目や目の奥の違和感が出やすい人

日頃から首・肩が凝っている人(自覚はないが美容院なので硬いと言われたことがある人)

朝、起床直後より首やかたが硬いと感じる人

顎が疲れて口が開きづらい人

エラが張っているように見える

自身の舌の周囲がギザギザになっている

パソコンを見ていて疲れ目や目の奥の違和感が出やすい人

このような症状がある人は首や肩にすでにコリが形成されていることが推測されるので、特に鍼灸療法が有効なことが多いです。

どんな施術をするのか?

頸肩部(三叉神経支配領域)のトリガーポイント(コリ)を処理し、筋肉そのものを柔らかくしていきます。また多くは自律神経の乱れも関与しているのでそれを整えるような施術も加えます。

1回/週の頻度の施術していき、経過を見て間隔を

鍼灸療法の報告

片頭痛発作予防に対する鍼治療効果 : 頭痛日数の減少と頭頸部等筋群の圧痛改善との関連について

 鍼治療を一定期間継続することにより、頭痛日数が減少するとともに、頸肩部の筋群と咀嚼筋の圧痛や緊張が改善したことから、片頭痛に対する鍼治療効果はこうした筋群の圧痛を緩和することで頭痛日数が減少し、発作予防に寄与したものと考える。また、片頭痛の発作予防に対する鍼治療の作用機序は、上位頸神経や三叉神経を求心路とし、三叉神経脊髄路核を経て高位中枢に影響を及ぼし、発作予防に関与している可能性も考えられる。

頭痛に対する鍼灸治療の効果と現状

基礎研究の立場から  鳥海 春樹

三叉神経領域に形成されたトリガーポイントを何らかの方法で処理すると偏頭痛発作の頻度が低下することは良く経験するところ・・・

・・・三叉神経系への慢性的侵害刺激が偏頭痛発作の前兆に関与する大脳皮質拡延性抑制の発生閾値を大きく低下させ、また発生時間を遷延させる・・・頭頸部の筋硬結や筋痛を治療する鍼治療が偏頭痛発作を抑制する経験的事実を裏付けるものである。

片頭痛に対する後頭部C2末梢神経野鍼通電療法:-天候の変化による発作の誘発が軽減された一症例-

本症例では主誘因である天候の変化による頭痛発作の誘発が軽減されたことが特徴であり、 後頭部C2末梢神経野鍼通電療法による三叉神経脊髄路核の感作の抑制が関連している可能性がある。

片頭痛の病態研究および治療に関する最近の知見より

鍼灸で産後のケア

心身の疲労が抜けない、うつ症状、食欲がない、睡眠不良、抜け毛、母乳が出ない、生理が来ない、2人目不妊、腰痛、肩こり、腱鞘炎、頭痛など産後に多い症状に対して鍼灸でケアを行います。

産後は出産時の影響でさまざまな影響が出ます。これは女性が妊娠中から出産後までドラスティックに体の環境が変化することに起因します。また近年、高齢の出産が増加傾向にあることからこの変化に対応できない、あるいは対応するまでに時間がかかる(産後の回復の遅れ)などから日常生活もままならないぐらいにつらくなる方も多いです。

また授乳中の場合はお母さんが摂取した栄養で母乳を作り分け与えることになりますので、より一層体調の回復は遅れることになります。またこの時期は投薬治療も限られますので、ただひたすら「体が楽になる日をじっと待つ」という方も少なくありません。

これらを総称して産後のマイナートラブルといいます。

マイナートラブル全般に対して

東洋医学では産後の状態を気虚・血虚・陰虚などが多くみられるとされています。心身の疲労、抜け毛、食欲不振、などもこれらが原因でいずれも妊娠、出産により母体のエネルギーが枯渇した状態が原因です。

そこで鍼灸療法ではそれらを補うようなツボに施術しエネルギーを補填することで体力の回復を図ります。

その他よくある症状について

産後の腰痛

原因

出産時の子宮骨盤の戻りが悪いこと

骨盤底筋や腹筋などの筋力が低下していることを背景とした、繰り返し行う赤ちゃんのベッド移乗などによる腰部への負担などが挙げられます。中には代償作用による大腰筋や臀筋群が痛みを出していることもあります。

鍼灸ケア

負担になっている腰部への施術+体力回復のための施術を組み合わせることで症状の改善を目指します。

よくある質問

Q、産後の骨盤矯正は必要ですか?

A、妊娠中から産後にかけて腰痛が発症した時、骨盤の異常として考えられることが多い。

骨盤の緩み、歪みなどと表現され産後の骨盤矯正が必須かのような宣伝文句も拝見されます。

本当に産後の腰痛は骨盤が原因なのでしょうか?

下記の報告を参考にしながら考えてみます。

産褥期の腰痛に関する研究:中澤貴代

この研究は質問紙法で有効回答数253/598で検討。

ちなみに産褥期とは出産後、妊娠前の体に戻るまでの期間をいいます。

一般的には6週から8週と言われています。

さて腰痛はいつから発症する人が多いのでしょうか?

下記はそれを表しています。

妊娠前から腰痛があった人が最も多く、妊娠を契機に腰痛を発症した人もついで多くあわせて41.9%になっています。

これらの人は産褥期においても腰痛が持続する傾向にあることがわかります。

次に下記のグラフを見てみましょう。

私が注目したのは恥骨結合部と鼠蹊部の痛みを訴えている群です。

妊娠前よりも妊娠期や分娩後1週間の方がグラフが高値になっているのがわかります。

この期間に痛かったと答えた人が多いということです。

また分娩後1ヶ月後には低値になり、痛いという人は少なくなっているということになります。

つまり恥骨結合部と鼠蹊部の痛みに関しては明らかに妊娠から出産までの間に何らかの影響で痛みが出現し、その影響は分娩後1ヶ月時には少なくなるということを表していると思われます。

これがリラキシンなどの作用により靭帯が弛緩し骨盤輪由来の痛みだと考えます。

産後にリラキシンの分泌は急速に減少し、約1ヶ月で靭帯の弛緩はもとに戻ると言われていますので、まさに一致します。

また分娩様式では腰痛の出現率に差はなかったと本文中にあることから出産時の影響はあまりないようです。

ここで仙腸関節部の痛みについて考えます。

上記のグラフでもこの部に痛みを訴える人がかなりいることがわかります。

筆者は仙腸関節部に痛みを訴える=仙腸関節由来の痛みとしていますが、ここに間違いがあります。

仙腸関節部に痛みを訴えている症例でも多裂筋や大殿筋や中殿筋、梨状筋、また脊髄神経の後枝由来の痛みのことの方が圧倒的に多いということは臨床をしているものであれば疑う余地はないでしょう。

image

したがって仙腸関節に痛みを訴える人の全てが骨盤輪由来の疼痛ではないということを頭に入れておくことが重要だと考えます。

そのほかの要因として、

産後の腰痛については骨盤底筋や腹筋の筋力低下

抱っこや授乳姿勢、ベッド移乗などに伴う腰殿部への負荷

睡眠不良による疲労

授乳による体力低下

などの複数の要因が重なって産後の腰痛として発症していると言われています。まとめると
産後の腰痛について、妊娠前や妊娠を契機に腰痛を発症する人が多く、そのような場合は産褥期まで継続する。
恥骨結合部と鼠蹊部の痛みは骨盤輪由来の疼痛の可能性が高いが産後1ヶ月程度で改善傾向を示す。
仙腸関節の痛みを訴える人も多いが、全てが仙腸関節(骨盤輪)由来ではない可能性が高い。
産後の腰痛を訴える場合は、育児期特有の背景もあるため総合的視点で考えなければいけないですね。
最後にこの研究ではそれぞれどのように対処しているかについて腹帯(42.2%)、腰痛体操(26.2%)、骨盤ベルト(6.7%)医療機関(3.1%)などであったとし、希望する対処法としてはマッサージ(51.0%)が1位だったことも紹介しています。

あん摩マッサージ指圧師の先生にとってはチャンスかもしれません。鍼灸師にとってはセルフ灸などで対処できることが浸透していないようです。引き続きの活動が必要かもしれませんね。

本日も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

頭痛

授乳姿勢や抱っこ姿勢などにより首や肩の筋肉の緊張が原因で頭痛を起こすことがあります。

とよしま鍼灸院 料金

慢性前立腺炎の鍼灸

目次

  • 前立腺炎の説明
  • 慢性前立腺炎とは
  • 本邦における慢性前立腺炎に対する鍼灸療法の報告
  • 当院の慢性前立腺炎に対する鍼灸療法
  • 症例報告
  • 不適応なケース

前立腺炎とは

前立腺炎とは,主に刺激性または閉塞性の泌尿器症状と会陰部痛の組合せとして出現する多様な疾患群を指す。

成人の9%でみられ、30代~40代に多くみられる。

尿検査・直腸診・前立腺マッサージ前後の尿検査および臨床像などで診断される。


症状はカテゴリーにより異なるが,典型的にはある程度の尿路の刺激または閉塞および疼痛がある。刺激症状は,頻尿および尿意切迫,閉塞,残尿感,排尿直後の再度の排尿,または夜間頻尿として現れる。疼痛は典型的には会陰部であるが,陰茎の先端,腰部,精巣に感じることがある。一部の患者は射精痛を訴える。

(NIHによる分類)

Category Iが急性細菌性前立腺炎、

category IIが慢性細菌性前立腺炎で細菌が検出される。

細菌が証明されないcategory IIIは慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome; CP/CPPS)とも呼ばれ、90%以上を占める。Category IIIは炎症を有するIIIAと炎症を有さないIIIBに細分される。

症状を有さないが前立腺生検組織標本や前立腺圧出液・精液中に炎症所見を認めるものをcategory IV(無症候性炎症性前立腺炎)とする。

慢性前立腺炎とは

Category IIとIIIが慢性前立腺炎と呼ばれる病態である。

Category IIICP/CPPSは、(1)泌尿器の疼痛または骨盤周囲の不快感と、(2)尿路症状と性機能障害のいずれかまたは両方が、過去6カ月間に3カ月以上持続しており、尿道炎、尿生殖器癌、尿路疾患、尿道狭窄、膀胱に影響を与える神経疾患ではないことが明らかな状態を指す。

このカテゴリーにおける一般的な西洋医学的治療は抗炎症薬,筋弛緩薬(例,ときに骨盤底筋の攣縮を軽減するためのcyclobenzaprine),αアドレナリン遮断薬,その他の対症療法(温坐浴など)などがある。

上述の治療法全ての考慮に加えて,これまでに抗不安薬(例,SSRI,ベンゾジアゼピン系薬剤),仙骨神経刺激療法,バイオフィードバック,前立腺マッサージ,および低侵襲の前立腺処置(マイクロ波高温度療法など)が試みられているものの,治療に関する質の高いエビデンスはほとんどないのが現状であり、治療に難渋する例も存在する。

(Category IIICP/CPPSは成人男性の前立腺炎で90%)

その結果として常に存在する疼痛・違和感などがストレスとなり、自律神経系や中枢感作・うつ病などを発症してしまう症例もあるとされている。

本邦における慢性前立腺炎に対する鍼灸療法

 主な報告は以下の通りである。

  1. 慢性前立腺炎に対する鍼通電療法、形井秀一、1992
  2. 慢性前立腺炎と前立腺炎様症候群の臨床的研究 7.慢性前立腺炎様症候群難治症例に対する低周波針通電療法、池内隆夫、1994
  3. 慢性骨盤痛症候群による会陰部不快感に対する陰部神経鍼通電療法、杉 本 佳 史、2005

下腹部や中髎穴、陰部神経などを治療部位とし、鍼通電をもちいているのがわかる。

当院の前立腺炎に対する鍼灸療法

慢性前立腺炎との診断をNIH分類のカテゴリーⅢB(慢性骨盤痛症候群・非炎症性)に該当する方への鍼灸施術となります。

当院の考え方

今感じている痛みや違和感は筋肉のトリガーポイントの関連痛及び絞扼性神経障害によるものと考えて施術します。

トリガーポイントとは筋肉に形成されたコリは発痛点となり、あたかも前立腺からの痛みのようになることをいいます。

また絞扼性神経障害とは、神経が筋肉に締め付けられて神経血流が低下し、神経痛様の疼痛の原因となっていることをいいます。

これら全てはトラベルらのトリガーポイントマニュアルを参考にしています。

【以下絞扼性神経障害について抜粋】

・・・陰部大腿神経は筋腹の中心を通って前面に現れる。時として腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経も本筋の筋腹を通過することがあり、不可解な痛みと知覚障害は圧迫・絞扼による症状の可能性も考慮するべきとしている。また陰部大腿神経の絞扼障害は鼠径部、陰嚢、陰唇、大腿内側に痛みと知覚障害を起こす・・・

座位姿勢のために前立腺が圧迫されて炎症を起こしているのではなく、

股関節の屈曲姿勢のために大腰筋の持続的収縮が矯正される→大腰筋が鬱血状態→トリガーポイント形成または神経の絞扼→疼痛が生じている。

また腰痛または潜在的な腰痛(腰痛の症状が下腹部の症状にマスクされているため感じていない)がある方も多くみられ、その施術により下腹部の症状が軽減してくる場合もあります。

したがって抗生物質やセルニルトンなど前立腺へアプローチしても症状が消失しない理由がここにあります。

【症例】

「下腹部から会陰部の違和感が改善した症例」

【症例】32才 男性 細身

【初診日】X年4月24日

【主訴】下腹部から会陰部の違和感

【現病歴】

X—1年:特に思い当たる原因なく下腹部に違和感が出現し、次第に会陰部まで広がった。一定期間経過観察していたが症状が改善しないためインターネットで調べ前立腺が原因ではないかと考えた。そこで泌尿器科を受診し、非細菌性の慢性前立腺炎と診断された。投薬治療を開始するも症状改善せず、X年4月に鍼灸治療を希望され来院。

【症状】

持続する下腹部から会陰部の違和感、射精時や射精後に違和感増強する。

起床時や就寝時に特に強くなる。

足の冷え(++)

長時間の座位や立位で大腰筋をストレッチさせるような姿勢になる。

慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)16点(中等度)

HAD尺度 記載なし

【東洋医学的所見】

輪郭は肝虚・眼輪筋部軽度くま・色白

腹診:胸脇苦満・瘀血部圧痛

【理学所見】

トーマステスト(+)

小転子(圧痛、ジャンプサイン)、下腹部の大腰筋の筋腹(圧痛、放散痛、ジャンプサイン)

腰部の疼痛・圧痛(-)

【病態把握】

大腰筋のトリガーポイントからの関連痛、または大腰筋の短縮による絞扼性神経障害と安段した。

東洋医学的には瘀血と判断した。

【治療】

小転子の大腰筋付着部へスーパーライザー・パイオネックス貼付

大腰筋のストレッチとウォーキング・入浴を行うように指導した。

【経過】

5/2 (第2診)違和感10→3

5/17 (第5診)違和感10→1

5/23 (第6診)下腹部の違和感10→0となり経過観察とした

        慢性前立腺炎症状スコア1点

12/6 (第7診)数日前より下腹部に軽度違和感が出てきたため来院

        慢性前立腺炎症状スコア14点

3/12 (第8診)前回の治療直後から違和感消失し再出現せず。

        最近運動が出来ていないため体の変化を見て欲しいとのことで来院。

        症状は(―)

前回同様の治療・指導をおこなった。

第6診以降約10ヶ月で症状は数日のみのため終了とした。

【結果】

4/24 初診5/23 第6診12/6 第7診3/12
16点1点14点実施せず
大腰筋圧痛(++)大腰筋圧痛(+)大腰筋(圧痛++)大腰筋(+)

【考察】

本症例はストレッチ姿勢、トーマステスト(+)小転子付着部や筋腹部の圧痛などの所見が存在していたことから、大腰筋がなんらかの関与をしている可能性が示唆された。また刺激法としては過去に経験した症例、本人が鍼治療は初めてということも考慮にいれ、スーパーライザーとパイオネックス貼付という軽微なものから始めることした。また足の冷えや所見から瘀血傾向も考慮し、入浴、運動などを指導しそれを実践していただいた。しかしなにより自律神経やうつ、中枢感作などの状態がなかったことが早期に症状の改善につながったものと考える。

結果として早期に疼痛の改善を認め、約10ヶ月の経過観察でも症状の再発は短期的なものであったことは本症例において選択した方法は妥当であったものと考える。 自律神経症状やうつなどを併発していないようなタイプにおいて、この方法はシンプルかつ、誰でも容易に行うことが可能なため、大腰筋の所見があれば試みても良い方法だと考える。

不適応なケース

抗うつ剤や抗不安薬など精神科系のお薬を服用している場合は不適応とさせていただいています。

また3回程度の施術で症状に何らかの変化がない場合は、不適応なようです。

逆に3回程度の施術で変化がある場合は鍼灸が有効だとも言えます。その場合でも再発防止の観点から数ヶ月~1年単位での施術が必要になる疾患です。

腰を据えて症状改善に取り組み、明るい人生にしませんか?

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